第18章 誓いの言葉

ランチどころではなくなった。

弾かれたように列を離れ、
会社の外に出て、スマホを取り出す。

木葉さんの着信は、
きっとこのことだったに違いない。

もう一度、かけてみよう、と
息を整えていると、
ちょうど木葉さんから着信が鳴る。


『こ、木葉さんっ？！』

『小春ちゃん、聞いた？』

『たった今、社員食堂で…
京治さんが退職願いを出したって…』

『俺も、さっき。
系列会社の人間の噂話で。』

『…京治さんから、連絡ありました？』

『ない。
何回かかけてるけど、折り返しもない。
小春ちゃんとこには？』

『温泉以来、一度も顔、見てません…
あの、木葉さん、』

『ん？』

『会社、辞めちゃったら、
この間教えてもらった
京治さんのやりたい仕事は？
どうなります？』

『…普通に考えて、
あかーしは関われないだろーな。
絶対、個人で請け負えるような
仕事じゃねーから。

あいつ、最近、なにもかも
バカに慎重だと思ってたけど、
きっと、辞めることを前提に
あれこれ考えてたんだな。』

『木葉さん…私、どうしたら…』

『あかーしと連絡とれねーと、
俺たちもどうしよーもねーから…
とにかく小春ちゃん、
誰かに何か言われたり聞かれたりしても
簡単に答えるなよ。
あかーしの真意がわかるまで、
何も言わない方がいい。』

『…わかりました。』

『不安だったら…今夜、おいで。エリも呼んどく。』

『…木葉さん、』

『ん？』

『いつもホントに、ありがとうございます。
木葉さんがいなかったら、あたし、今ごろ…』

『なぁに言ってんだよ。
あかーしは、弟みてーなもんだから。
あかーしが大事にしてるもんは、
俺や木兎にとっても大事なのっ。

何かあったらまず俺に連絡な。
んで、仕事終わったら、すぐおいで。

鍵、いつもんとこにあるから、
俺より早く着いたら、先にあがっときな。』

…何一つ解決してないし
不安ばかり募るけど、
木葉さんの声を聞いたら
少しだけ落ち着いた。

京治さん…
今、どこにいるの？

みんな、心配してるよ？

話、きかせて。
一人で抱えないで。
私、まだ何の役にも立てないけど、

京治さんの気持ち、
少しでもわけあいたい。

ちゃんと眠れてますか？
…ここに、
あなただけの膝枕、
あるからね…