第18章 誓いの言葉
京治さんの目線の先にあるのは、
木製の揺り椅子…ロッキングチェア。
外国の映画で
おばあさんが座って編物でもしてそうな、
そんな大きなロッキングチェア。
抱きかかえた私を
見下ろして、言う。
『多分、俺、今夜は小春を
めちゃめちゃに愛すよ。
もしそれで、俺のこと嫌いになったら、
正直に言って。
大丈夫、怒ったりしないから。
その時は、俺達、出会う前に、戻るだけ。』
…前にも、同じことを言われた。
この人は、
愛することも愛されることも
恐れている。
家族より会社を選んだ父。
兄弟一人一人、違う母。
愛情は、いつか終わる。
愛してもらわなくても生きていける。
そう思わないと
やってこれなかったのだろう。
彼に…京治さんに、
ここに終わらない愛がある、
と、伝えたい。
出会う前になんて戻れない、
と、伝えたい。
『…もし、何をされても
私が京治さんのことを大好きなままだったら?』
『…その時は、俺も、覚悟を決める。』
覚悟?
何の覚悟?
…聞きたいけど、聞けなかった。
なんとなく、
今はそんな話をしちゃいけない、と
思ったから。
まるで、大事な人形を扱うように、
そっとロッキングチェアに下ろされる。
そして、
周囲を見回した京治さんは
木葉さんが普段、
テレビでも見ながら使っているであろう
ゴムバンドのような
トレーニンググッズを見つけて、手に取る。
『小春、じっとしてて。』
ロッキングチェアの背もたれの後ろ。
私の両手を、そのバンドで縛り、
タオルで軽く、目隠しをされる。
『…京治さん?』
『…イヤ?』
『…痛くされるのは、イヤ…』
『痛いことなんか、絶対、しない。
小春を、俺のものにしたいだけ。』
『…じゃぁ、イヤじゃない…でも、優しくして…』
『もちろん。』
私はこれから、
京治さんにめちゃめちゃに愛される。
考えただけで、
身体の芯に火がついた気がして。
見えない分、
全身の神経を研ぎ澄まし、
京治さんの気配に集中した。
信じてる。
京治さんの優しさは本物だ。
どんなに激しく触れられても
恥ずかしいことをされても
京治さんなら、愛だと思える。
私達は、何があっても離れない。
だから、
私も、
愛される覚悟を、
決める。