第17章 ジューンブライド ~クリスタルウェディング~
『幸せすぎて、怖いくらい。』
私が呟くと、
横を歩いていた一鉄さんが、立ち止まる。
『アキさん、お誕生日、おめでとう。
いつも、僕や子供達のために
明るくて元気なアキさんでいてくれて
本当に、感謝してます。』
さりげなく私の手をとった一鉄さん。
…右手の薬指に、指輪をはめてくれる。
『…これは?』
『クリスタルです。
結婚15年目はね、
"クリスタル婚"っていって、
水晶にちなんだものを贈ると
いいって聞いたから。
ほら、覚えてますか?
15年前、結婚したときの誕生日に
ダイヤモンドの指輪をあげましたよね?
あの時"いつか、もう1つの誕生石も
プレゼントする"って、約束したこと。』
4月の誕生石は、
ダイヤモンドとクリスタル。
ちょうど"クリスタル婚"にあたる
15年目の今年の誕生日に、
クリスタルの指輪。
…ずっと、覚えててくれたの?!
『クリスタルには、
"幸せな結婚" "愛の成熟"という
意味があるそうなんです。
今の僕の気持ちにピッタリだから。』
頬が、熱い。
…指輪を見つめた自分の右手に
ポトリと雫が落ちて初めて、
自分が泣いていることに気づいた。
海も、空も、大きく潤む。
幸せすぎて、涙が止まらない。
一鉄さん、
あなたと出会えて、
本当によかった。
あなたと結婚できて、
本当によかった…。
『アキさん、これからもずっと、
僕の"最愛の人"でいて下さいね。』
抱き締めてくれた両腕は
あの頃から、かわらず、
あたたかくて、
やさしくて、
羽のように
柔らかくて。
私たちは、
まるで
新婚旅行のカップルのように、
月に照らされ、
波の音に祝福されながら、
キスをした。