第17章 ジューンブライド ~クリスタルウェディング~
『さっきも言いましたけど、
僕、お金で買えるものや
他人から与えられる肩書きは
多分、たいしたものはあげられません。
でも、気持ちや、言葉や、思い出なら
僕に出来る精一杯を差し上げます。』
…こんなに心のこもったプレゼントを
もらったことは、ない気がする。
形のない、プレゼント。
『どんな過去も、
今の早瀬さんに繋がってるから、
僕は、その全てに感謝しますよ。
早瀬さんは、そのままが、一番いい。』
…涙が出る。
私をそのまま、受け止めてくれるって。
過去にも感謝してくれる、って。
涙を親指で拭ってくれた武田さん。
もう一度、
今度はギュッと抱き締めてくれた。
白いTシャツから、いい香り。
自然と深呼吸したくなって
大きく息を吸い込むと、
少し、心が落ち着いた。
おかしいかな?
これから抱かれるっていうのに、
落ち着く、なんて。
『…僕に教えて下さい。
嬉しいことも悲しいことも、全部。
心のことだけじゃなくて…
体のことも。
何が気持ちいい、とか
何が興奮するか、とか
してほしいことや
足りないことも、全部。
いいですか?
恥ずかしい、なんて思わないで。
僕に、遠慮は無用です。』
…待ち望んでいた、
武田さんとの夜。
傷も、快感も、
知ってもらう。
本当に、
なにもかも、
裸の私のすべてを。