第16章 指輪
(エピローグ)
今日は、
ビーチレストランのデッキを貸し切って
小さなパーティーが開かれています。
"バーベキュー&ビアガーデン"
ということになってはいますが、
これまで私共の会場で
多くのメンバーが晴れの日を迎えて下さった
烏野高校バレー部の恩師の結婚祝いを
兼ねているそうで。
幹事をつとめる西谷様と田中様が
『すんません、なんか、簡単に出来る
結婚式っぽいこと、ないですかね?』
…と声をかけてこられたのは、
受付を始める15分前。
急でしたので大げさなことは出来ませんが…
私の机の引き出しに入っていた
赤いサテンのリボンを一巻き、
ご準備いたしました。
パーティーの中盤。
西谷様がお客様に声をかけています。
『みんな、ちょっと、こっち集まって
輪になって並んでくれ~っ!』
…砂浜に大きな人の輪ができました。
並んだ皆さんに赤いリボンを持ってもらうと
リボンの左右両端を、
主役のお二人に渡します。
『そんじゃ、リングリレーを始めます。
最初の指輪は、
烏養さんがこっそりバイトして買った(笑)
奥さんへの愛の証でーす。』
…烏養様の手元をスタートして、
並んだ皆様お一人お一人の手を介し、
赤いリボンに通した指輪が進んでいきます。
指輪に触れてくださったゲストの数だけ
幸せへの祝福の想いを指輪に込める。
それが、リングリレーです…
ぐるっと一周した指輪を、
烏養様から奥さまの左手の薬指へ。
『次は、二人で買いに行ったのに
烏養さんが決めきらず、結局、後日、
奥さんが一人で出掛け直して選んだという
優柔不断な烏養さんへの(笑)指輪でーす。』
奥さまの手からスタートして、
ぐるりとまわって烏養様の左手の薬指へ。
カメラを抱えた、新聞記者の菅原様。
『ハイハイ、芸能人みたいに、
左手並べて笑ってくださ~い。』
照れくさそうに顔を見合せながらも
リクエスト通りのポーズをとるお二人。
何度かフラッシュが光ると、
自然と拍手がわき上がりました。
『コーチ、おめでとうございます!』
『仲良くしろよ!』
『お幸せに!』
小さな輪っかは、
"最後の恋"で"唯一の愛"の証。
大きな人の輪を介して届いた指輪が
お二人の左手の薬指で
永遠に、輝き続けますように。
烏養繋心様、
アキ様、おめでとうございます。
どうぞ末永く、お幸せに!