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ウェディングプランナー(R18) Hi-Q

第16章 指輪



『かわりに、なによ?』

『二人で、寝るか?』

…他人が聞けば、これはこれで充分
"キケン"な言葉だろうけど。

俺とアキ姉の間柄なら、
この言葉は"男と女"の意味じゃない。

アキ姉が、ほわっと笑う。

『うん、布団、もっておいでよ。』

この一週間、廊下に敷いていた布団を
アキ姉の隣にひっぱっていって
ピッタリと隙間なく並べた。

大丈夫。
今夜は絶対襲わないっていう自信がある。

今、少しずつ"お隣さん"から
距離を縮め始めたところだ。

急ぐことはない。
焦ることもない。

むしろ、西谷が言った通り、
もし、もしもだけど、
この先、俺がアキ姉に
"おちる"日が来たら、

その時は、

ちゃんと俺からアキ姉を誘って、
ちゃんと俺からアキ姉を抱くから。

…電気を消してからも
少しの間、隣の布団から
寝返りをうつ音が聞こえる。

『ねぇ、』

『ん?』

『小さい頃みたいにさ、
手だけ、つないでいい?』

…えらく今日は甘えてくるな、と思うけど、
ずーっと強がってきたアキ姉が
自分の弱さをさらけ出した後だ。
誰かがそばにいる、という安心が
欲しいのかもしんねぇ。

『…ほぃ。』

左手を差し出す。

小学校の低学年くらいまでは、
お互いの家に泊まりにいったり
一緒に昼寝する時、いつもこうして
布団を並べて、手を繋いで寝てた。

…何年ぶり?30年以上、だ。
大の大人が、手を繋いで寝るって。
なんか、笑える。

けど、久しぶりに繋いだその手は
ふっくらしてて温かくて気持ちよくて…

アキ姉が、俺の手に顔をくっつける。
小さな顔。
俺の手のひらにすっぽり隠れそうだ。

クンクン、と、鼻をならす音。

『泣いてんのか?』

『違うよ。タバコの匂い…落ち…着…く…な』

最後は、言葉になってなかった。
眠った、か?

…別れた旦那は、
多分、タバコを吸う男だったんだな…

消しきれない思いがあるなら、
さっきはやっばり、
抱かなくてよかった。

俺たちはまだ、
同じ屋根の下に暮らす、隣人。
それ以上になる時がくるんだろうか?

見つかるはずのない答えを探しながら、
俺も、眠りにおちた…。


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