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ウェディングプランナー(R18) Hi-Q

第16章 指輪



…山口と結婚した、彼女。

もちろん、
アイツらの結婚は心から祝福してる。
俺より、山口の方が
彼女を幸せにするだろうな、とも思う。

俺の傷は、そこじゃない。

彼女の父親の前で、
『彼女を幸せにする』と
言い切れなかった自分。

彼女の父親に
認めてもらえなかった生き方を
変えよう、と思えなかった自分。

…わかってる。
俺は、彼女と一緒に生きていくことより
自分の"今"を変えないことを選んだんだ。

ハッキリ言えば(言いたくないけど。)
ラクな方を、選んだ。

結局、失いっぱなしのうえに、
案の定、俺はその後、
何一つ、変わっていない。

山口が、グンと男らしくなり、
西谷が、さらに頼もしくなり、
この間、影山も、
彼女にプロポーズしてから
二人で世界に飛び出していった。

みんな、男としての覚悟を決めてるのにな…

結局、何一つ守れず、
何一つ変われない俺。
…俺のは、自分でこじらせた傷、だ。

焼酎のグラスの中で溶けていく氷を
くるくると人差し指でまわしながら、
アキ姉は、ポツリと言った。

『私も繋心も、
相手のことを愛しきれなかったんだね。』



"愛しきれなかった"



この言葉が、ぴったりだと思った。

愛していた、とは、思う。
でも、自分のすべてを捧げきる、
とまでは、いかなかった。
俺も、アキ姉も、
それぞれのパートナーも。

相手を思いやって
別れたように見えるけど、
実は、自分がこれ以上傷いてでも
一緒に生きていこう、とは
思わなかった、ということ。

『久しぶりに会った繋心が、
なんだか優しくなったなって思ったのは、
傷みを知ってる人の優しさだったんだね。
本当は、私の離婚の理由、
聞きたかったはずなのに、
とことん、私の強がりに付き合ってくれて…
その放置具合が、すごく嬉しかった。』

…そんな立派なもんじゃねーけどさ。

『俺ら、傷だらけだな。』

『いい歳して、不器用だよね(笑)』

『アキ姉、ガンコだもんな。』

『それ、繋心に言われたくない。』

自分が傷ついた分、
誰かに優しくできたのなら、
それはそれで、よかったのかもしんねー。

…そう思わないと、
アラフォー独身男女二人暮らしなんて、
やってらんねーや(笑)

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