第15章 100回目のプロポーズ
バタン、と閉まる、ドアの音。
荷物をその場に落として振り向き、
後ろからついてきたアキに
両腕を伸ばした。
『…アキ…』
『へぇ!これがラブホかぁっ!』
俺のことなど目にも留めず、
小走りで部屋の中に駆けていくアキ。
その瞳はキラキラしてて…
そう、あの、
好奇心が疼いてる時のアキの瞳。
伸ばした俺の両腕は行き場を失ったけど、
そんなことはどうでもいいくらい、
俺は、嬉しかった。
これが、アキ。
俺が忘れられなかったアキ。
アキは、こうでないと。
…ベッドや風呂場、
番組案内表、
アヤシイ自動販売機や、
ベッドサイドの備品や…
そんなものを一通り見たアキは、
やっと、俺の方を見てくれた。
…おせーよ(笑)…
『トビオ、時間、大丈夫?』
急にまともなことを言われてびっくりする。
時間?あぁ、時間は…
『大丈夫。今日の最終の新幹線で
東京に戻ろうと思ってたけど、
明日の朝でもいいから。』
『西谷さんの二次会は?』
『それも大丈夫、連絡してある。』
『じゃ、朝まで一緒にいられるの?』
『いられるよ。』
『トビオ…ね、本物のトビオ?
触っていい?消えたりしない?』
『本物だよ、消えねーよ。
お前こそ、触ったら消えたりしねーだろな?』
『…触ってみる?』