第15章 100回目のプロポーズ
カッチーン。ブッチーン。
キレた。俺、キレたぞ。
『アイツらと一緒にすんなっっっ!』
俺の知ってる言葉じゃ
どうやったって伝わんねぇ。
そう思ったら、
思わず、
"バンッ"
壁に体ごと押し付けて、
そのまま、
キスをした。
…時間が止まったように、
目を見開いて固まっている早瀬。
ハッ。
…俺も、我にかえる。
『わ、わりぃ。』
早瀬は、泣きそうな顔。
『…わたしの、ファーストキス…』
『だから、わりぃつってんだろ。』
『私、キズモノに…』
…今どき、キスくらいで
キズモノなんて言わねーだろーが。
『どーしてくれんのよ、影山君…』
あの時、何であんなことを口走ったのか
俺もわかんねー。
でも、心のどこかで、
自分とどこか似ている早瀬のことが
気になっていたのは、確かだ。
『わかったよ。
じゃ、責任とって俺がお前とつきあう。
そんなら、彼氏とのキスってことで、
文句ねーだろ。』
『…はぁっ?そんなこと、頼んでないし!
同情?ならこっちからお断りします!』
『同情なんかじゃねぇ。
グダグダ言ってねーで、納得しろ!』
…しばらくそうやって
意地の張り合いをしていた時、
校内放送が流れた。
『今日の当番担当の
2年5組、影山と2年3組、早瀬。
大至急、職員室まで。』
…あっ!!
慌てて駆けつけた職員室で
二人して先生にこってり絞られ、
罰としていつもの倍の作業をさせられ、
当然、部活にも遅れて
今度はその罰で片付けまでさせられ…
一人で帰ろうと体育館を出て振り返ると
美術室の灯りが
ちょうど、消えたところだった。
…少しだけゆっくり靴紐を結び直し、
いつもはしない鞄の中の整理もして、
いつもよりゆっくり歩く。
来た。
間違いない。
『…偶然だな。俺も居残りで、今、帰り。』
『私も。もぅ、先生、ヒドくない?』
『マジで、あり得ねぇ。
これじゃ帰って宿題する暇なんか、ねーし。』
…こうやって、先生の悪口を言いながら
二人で帰ったのをきっかけに、
俺たちは、急速に親しくなり、
そして、本当に、つきあい始めた。
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