第12章 1年後のガーデンパーティー
『さーて、と。』
雪乃さんは、精一杯頑張った。
ここからは、俺の役割だ。
『スガさん、バレー部のみんなに
雪乃さんを紹介してきますよ。』
『おぉ、騒がしいヤツラだから、
雪乃ちゃんをガードしてやれよ!』
スガさんたちに手を振り、
背中を向けて歩き出す。
さりげなく、人目につかない所へ。
きっと、
泣きたいだろうから。
『雪乃さん、ちゃんと言えたじゃないですか。』
『…ふぅっ…そうかな?…
ちゃんと言えてた?ちゃんと笑えてた?』
『ええ…もう頑張らなくていいですよ。』
スッと
歩みを止めた雪乃さん。
…大粒の涙がポロポロポロポロ…
多分、言わなくても伝わってる。
…どうぞ。ここなら、泣いていいですよ…
『コ、コーシ君は、浮気なんかしないし、
アキのことを
ちゃんと分かって応援してくれるから
そのうち、子供とか出来て…
きっといい家族になるね…』
…そうですね、としか
返事の言葉が見つからない。
今の言葉は、
雪乃さん自身が作りたかった
家族のことを言ってるんだろうな…
今日聞く雪乃さんの言葉の端々に、
この人の傷の深さを思い知る。
柔らかい心についた深い傷。
例え外側はふさがっても
中は完治しないまま
ここまできてしまったんだろう。
信じること。
愛すること。
愛されること。
全部あきらめて、
ずっと一人で痛みを抱えて。
なのに、
やっと出会えた好きな人は
親友の婚約者。
今度の傷は、癒えるのだろうか?