第3章 受け継ぎ婚
『アキ、こんな時に言うのも何だけど、
お父さんの喪があけたら、結婚しよう。
これからは、俺がアキの家族になる。』
『家族…』
アキは一瞬、驚いた顔をする。
『そうか、私、今、家族、いないのか。
でも、独りぼっちなんて
一瞬も気付かなかったよ。
大地のこと、フツーに家族だと思ってたし。』
…この人は。
そういうことをサラッと言うところが
たまらなく好きだ。
今までで一番やわらかく、
アキを抱きしめる。
『アキ、おかえり。』
『大地、ただ い ま…』
アキのまわりの空気が、ふるえた。
『…あぁ、やっと泣ける…』
はじめは、静かに。
そのうち、しゃくりあげるように。
そして最後は声をあげて。
アキは、
子供のように泣いた。