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ウェディングプランナー(R18) Hi-Q

第12章 1年後のガーデンパーティー


その日は、水族館の最寄り駅で別れた。

駅のホームで電車を待っている間、
申し訳なさそうな顔で雪乃さんが言う。

『縁下さん、
私を止めてくれてありがとう。
あのチョコなんですけど…
捨ててもいいから持っていって下さい。
メッセージカードも入ってて…
見られるのは死ぬほど恥ずかしいけど
でも、もうあんなことしない、っていう
私の誓いだと思って託します。』


…先に雪乃さんを電車に乗せて見送り、
俺はそのあと、一旦、帰社した。

自席に座って今日の事を振り返ると
どっと疲れが出る。
書類や伝言メモが山積みの机を見ても
仕事なんか手につかなくて。

そうしてる間に、
みんなぞくぞくと帰っていく。
なんか、今日、みんな、帰り早くね?

…あ、そうか。バレンタインか。
予定あるヤツラはさっさと帰るわな…

ほとんど誰もいなくなった頃、
思いきって
あのピンクの紙袋を開けてみる。

これ、
トリュフっていうんだっけ?
手作り。

ちょっと良心が痛むけど
メッセージカードを開く。


"料理上手のアキには負けるけど
私もコーシ君のことを想いながら
一生懸命作りました。
コーシ君みたいなステキな人に出会えた
アキが、うらやましいです。"


…ひょえ~。
好き、とか書いてあるわけじゃないけどさ。
セーフかアウトかっていわれたら、
これ、アウトだろ。
つくづく、未遂にできてよかったよ…

思えば、今日、俺がもらったチョコは
他人を思って作られたこれ1つだけ。

結構、不幸なバレンタインだな(涙)

そう思いながら、
トリュフを1つ、口に放り込む。

行きつくことのない思いが
込められたチョコは、

なんともビターな味だった。

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