第11章 ガーデンパーティー
…そう思った俺の心が
見えたかのようなタイミングで、
アキが、つぶやいた。
『コーシ、わかったでしょ…
私、結婚向きの女じゃないと思う。』
『え?』
…逆、だろ?
俺は今、とてつもなく、
君と結婚したいと思ったところだよ?
『部屋見れば、わかるでしょ。
忙しいと、こんな散らかった状況でも
平気なんだ、私。』
『俺だって、似たようなもんだから。』
『だから、なの。
そういう人間が二人で暮らす…って
きっとお互い、居心地よくないよね。』
『…そんな…そう、なのかな…』
『先に言うとね、
仕事は、辞めない。辞められない。
私、
あのキッチンのためにローン組んでるし
先の仕事の予定も入ってるし、
税金だって、翌年にかかってくる。
一度、自分で仕事を始めちゃったら
もう、簡単には止められないんだよね。』
『仕事は手伝えないけどさ、
家のことは、俺も手伝うし。』
『それもね…失敗してきた。
聞きたくない話かもしれないけど…』
聞きたくない話?
『私、1回、離婚してる。
仕事と家庭をちゃんと両立出来なかったのが
一番の原因だった。』
…驚き、というより、
やっぱり、という気持ちだった。
薄々、感じてたんだ。
アキの、男に対する気負いのなさ。
結婚に対する憧れのなさ。
それに、あのキッチンスタジオ。
一人で生きていく覚悟をしたからこそ
途中で止められない戦いを
自分に課したに違いない。
…そこに、
"ボヌール…幸せ"という名前をつけたのは
彼女の真意、だったのか。
それとも、本当は諦めきれない思いを
託したのか。
聞きたくない話、じゃなくて、
聞けない話、だった。
でも。
前の旦那さんとは
うまくいかなかったかもしれないけど、
それは、
男が全員ダメってことじゃないだろ?