第11章 ガーデンパーティー
『…食い物の思い出って初めて考えてみたけど、
思い出してみると、案外あるもんだね。』
『でしょ?
お母さんの手料理とかは特に、亡くなった後で
"作り方を聞いておけばよかった"って
後悔して来られる方、結構いるのよ。』
『つまり、アキが教えたい料理じゃなくて…』
『お客様が食べたい味を探す手助け…
アドバイスをするから料理アドバイザー。』
…そんな話をしているうちに、
料理が出来上がったみたいだ。
『お待たせ。
二日酔いあけの体に優しいメニューにしてみた。』
梅干しのおにぎりと
シジミの味噌汁。
ブロッコリーと豚肉のカレーソースがけ。
アボガドとサーモンのサラダ。
大根おろしには納豆を添えて。
ヨーグルトには、柿のジャム。
『うまそー!
…あ、どれがどんな効果、とかって
聞いてから食べるべき?』
『私、そーいうこと気にするより
残さず食べてほしいタイプ。』
『ちょっとホッとしたよ。
じゃ、遠慮なく、いただきます!』
今日も、一品一品、しみじみうまい。
全然、派手な料理じゃないんだけどな。
男って
胃袋をつかまれると弱いっていうけど、
俺は完全に、アキの、
そしてアキの料理のとりこだ。
出会って2日目に
口にすることじゃないかもしれないけど…
『アキと結婚したら、毎日、
こんな安らげる料理が食べられるのかな?』
アキは、苦笑いした。
『男の人って、すぐそれ言うよね。』
『だって、普通、そう思うよ。』
そして気付く。
アキは今まで、何回か、
そう言われたことがあるんだな。
でも、結婚を選ばなかった、ということか。
…理由が、気になる…