第10章 公開プロポーズ
賢太郎、という名前だったというお兄さん。
『名前の通り、
頭もいいしスポーツもできてさ、
顔とか身長とか俺と一緒なのに、
スッゲー、何でも出来るんだ。
でも、全然うらやましいとかじゃねぇの。
俺、賢太郎と超仲良くて。』
そんなお兄さんとおそろいで
自転車を買ってもらった
小学3年のクリスマス。
夕方まで二人でその自転車で遊んで、
家族でパーティーをして…
ところがその夜、
お兄さんは激しい腹痛をおこし
救急車で搬送される。
緊急手術で命は助かったものの
そのまま、麻酔から覚めず…
『すっげー楽しいクリスマスだったのに…
それ以来ずっと、
うちでは、クリスマス祝わなくなった。』
今日こそは目が覚めるかもしれない、
その時、誰かそばにいてあげたい…と
光太郎のご両親は、毎日交代で病院に足を運び、
光太郎は、
学校から帰ると自分のことは自分でやり、
バレーの試合や練習の同伴も
赤葦君たちチームメイトの保護者が
世話してくれたんだそうだ。
『な、知ってる?
人って、意識はなくても、
背とか爪とか髪とかちゃんと伸びんだよ。
そんなん見てたら、
今日は目が覚めるんじゃないか、
明日は目が覚めるんじゃないか、
って思うじゃん。
父ちゃんも母ちゃんも、そりゃ
毎日、病院に通うわけさ。
俺、留守番でも全然平気だったけど。
だって賢太郎の命、かかってっし、
あかーしとか友達んちの親にも
いっぱい可愛がってもらったし。
いつの間にか、それが普通になってたし。』
…光太郎、
こんなに静かに話せるんだね。