第10章 公開プロポーズ
『アキ、遅くなったけど
誕生日おめでとう。乾杯っ!』
…光太郎の部屋に来るのは、二回目。
一回目は、酔った勢いで来て
そのままベッドに直行したから、
ちゃんと部屋を見るのは初めてだ。
想像できないかもしないけど、
光太郎は、案外、キレイ好き。
いつも
シャツにはきちんとアイロンがかかってて、
それに驚いたら
『大抵の家事は自分で出来る』と
言っていたことを思い出す。
確かに部屋の中はこぎれいだし、
台所も、使いやすく整理されていた。
そんなさっぱりした部屋のタンスの上に…
あった。
小さな、同じ顔の兄弟が並んだ写真。
『…あれが、光太郎のお兄ちゃん?』
『え?…あぁ。
あれ?俺、話したことあったっけ?
あ、もしかしてあかーしか?何か言ったのか?』
『お兄さんの法事だろう、って。』
『えーっ!アイツ、
アキの誕生日にそんな話したのか?
バッカなヤツ!
お祝いの席を任せたんだから
もっと楽しい話して盛り上げろってんだよなぁ。』
…あぁ、やっぱり。
明るさの向こう側にある
なんともいえない光太郎らしい優しさに
心が温かくなるのを感じた。
こういう気の遣い方をする人なのだ、
光太郎という人は。