第27章 ウェディングプランナー

チャペルの前の階段から出て
みんなでビーチに集まる。

風もなく、
雲もない空には大きな満月。
波の音が心地よい。

『しっかり握っとけよ～！』

夜久君が持って出てきたのは、

あ。
金色の、バルーン。

『写真、全部はずしたから、後で渡すな。
猫又監督からの焼酎も、もちろん一緒に。』

みんなで1つづつバルーンを持ったところで
武田様が声をあげる。

『これからみんなで
バルーンリリースをしまーす…掛け声は？』

『はい、僕たちが。』

出て来て下さったのは、
お子さん二人と手を繋いだ
縁下様と雪乃さん。

お二人の結婚式の時には
青空にカラフルなバルーンを
みんなでリリースしたけど、

今日は、この夜空に、
星みたいな金色のバルーンを放す。

『それでは皆さん、

黒尾さんと早瀬さんと、
そしてお腹の中のお子さんにも、
この先、星みたいにたくさんの
輝き続ける幸せが訪れますように、
…っていう願いが天まで届くよう、

想いをいっぱい、いーっぱい、
この風船に込めて下さい。いいですか？』



波の音が聴こえる。
いつもここで聴いてきた、音。

月の光がさしてる。
今までたくさんのカップルを
照らしてきた、光。

みんなの顔が見える。
私の大切なお客様で、
…私の大切な、友達。

黒尾さんの姿が見える。
空を見上げる横顔に、
柔らかな月明かり。

…私の、最愛の人。

みんなが
私たちの幸せを
この風船に託してくれるなら、

私は、
みんなの幸せを
この風船に、託そう。

ここにいるみんなが、
いつまでも、幸せでいられるように。

困難にぶつかることがあったら、
私も一緒に作ってきた
それぞれの結婚式の日の
あの幸せな気持ちを思い出して

家族で乗り越えていけるように。

みんなの、それぞれの、



"あの日"へ。





『それではいきますよ！
天まで届く大きな声で、
せーのっっっっ、』