第27章 ウェディングプランナー
4月。
新入社員が入ってきて。
異動で新しく着任した人もいて。
慌ただしい新年度が始まった。
私は、
辞めること、そして妊娠したこともあり、
五月一杯までは、引き継ぎをしながら
平日は、出来る限り休みを消化し、
土日は、もともと担当していたお客様の
披露宴を施行していくことになった。
体調も、順調。
黒尾さんも春先は忙しいらしく、
4月は会えなかった。
でも、電話やLINEでの連絡は
しょっちゅうとりあってるから
離れていてもちっとも寂しくない。
5月。
秋と同じく、
結婚式のトップシーズン。
さわやかな季節の結婚式は
本当に、気持ちいい。
もう、
私が担当する結婚式も残りわずか…
そう思うと、一つ一つの披露宴が
どれも特別なものに思えて。
今まで以上に心を込めて、
光の中に送り出した。
私が関わった新郎新婦みんなが
幸せでありますように。
…今まで見守ってきた
たくさんのカップルを思い出すことも多く。
そして、
まだ結婚したわけじゃないけど
私も少しだけ"お嫁さん"の気持ちを
想像することが出来たり、
私みたいに妊娠中の新婦と
妊婦トークに花が咲いたり…と
最後の最後になって
また、仕事が好きになっていく。
結婚式が、好きになっていく。
職場の仲間に対しても、
また、見る目が少し変わったりして。
みんなの仕事ぶりを見ていると、
ここも"チーム"なんだな、と思う。
もう、
私は、いなくなるけど。
私がいなくても、
何も変わることなく
ここは動いていくのだけれど。
…私にとっては、
ここが、唯一の居場所だったのに。
そう思うと、少し、淋しい。
でも、
だからこそ、
"家族"という私の新しい居場所を
自分で作らなくちゃね。
さすがに5月は忙しく、
結構、仕事に出てくる日も多かったけど
むしろ、嬉しかった。
結局、5月も
黒尾さんとは会えないままだったけど
それも平気なくらい
…といったら怒られるかな(笑)…
充実した日々で、
私はギリギリまで
プランナーとしての
仕事を全うできた。
理解してくれた職場のみんなにも、
いつも気にかけてくれた夜久君にも、
心配しながらも
自由にさせてくれた黒尾さんにも、
私の中で順調に育ってくれてるBABYにも
感謝、感謝、の毎日、だった。
…そして、時は、やってくる。
