第27章 ウェディングプランナー
小樽から九州に戻った時は、
もうすっかり夕方だった。
だから、
一泊だけの予定だったアキは
結局もう1日、うちに泊まった。
とはいっても
観光やショッピングに行くわけでもなく
旅の荷物を片付けて洗濯し、
近くを散歩しながら、
俺の生活範囲をあれこれ見て回り、
帰り道に一緒にスーパーで買い物をして
二人で料理し、
こっちの焼酎を飲みながら晩飯を食べ、
…たっぷりナマで交わって…
『明日からもっと、仕事、頑張れそう!』
と、
涙の一滴も流さず
満ち足りた顔で
連休最終日の午前中、
新幹線で東京へ戻っていった。
駅から一人、
家へと向かいながら、考える。
濃厚な、5日間だった。
旅の中でアキの気持ちを知った。
転勤のきっかけがきっかけだっただけに
俺としては何とも無駄な遠距離恋愛…と
正直、自分の軽率な行為を悔やんだり、
アキに申し訳なく思うばかりだったけど
アキは、
さっさとそんなことを乗り越えていて。
だから、
俺も、もう、前を向こうと決める。
反省も後悔も、たっぷり、した。
もう、次を…先を…見よう、って。
俺に出来ることは、なんだろう。
そう考え、
とにかく、月に1度は必ず連休をとり
アキの家に泊まりに行き始めた。
もともと会社は土日、休みだ。
今までは転勤直後で
なかなかうまくいかなかったけど、
半年たって仕事にも環境にも慣れたし、
その気になれば、時間くらいなんとかなる。
金曜夜の新幹線で、アキの家へ。
土曜の朝、アキを仕事に送り出し、
のんびりしながら晩飯の準備をして、
夜、アキが帰ってきたら
家で飯を食いながらゆっくり過ごし、
夜は、
…翌日の仕事に差し支えない程度に…
たっぷり抱き合って、
日曜日の朝、アキは仕事へ行き、
俺は、九州へ戻る。
慌ただしそうに思えるけど
たった月に一回二回。
アキに会うことを思えば
大したことない。
この先、
どんな変化が
どんな順番でやってくるかは
誰にもわからないことで
そのために
今、出来ることを誠実にやる、というのは
ある意味、当たり前のこと。
普通の毎日だと
忘れてしまいがちけど
たまたま俺たちは、
遠距離恋愛中だから
それを特に意識してる、というだけで。