第27章 ウェディングプランナー
待ちに待った、夏休みが来た。
…三月末に遠距離恋愛を始めた黒尾さんに
やっと、やっと、やっと、会える。
私の誕生日と、
つきあい始めた一年の記念を兼ねて
二人で初めての旅行に行こう、
…って決めてて、
今日まで、それを楽しみに、
遠距離恋愛を乗り越えてきた。
行き先は、ず~っと前から、
電話するたびに話し合っていて。
『どこがいい?』
『私がそっちに行きましょうか?』
『え?ここ?』
『黒尾さんちでゆっくり…』
『ばぁか。そんなん、旅行じゃねーだろ?』
『あ、そっか…南?北?』
『俺は、涼しくて、
食いもんと飲みもんがうまいとこ。』
『じゃぁ、北、ですね。』
『せっかくだから、ぐーんと北にするか。』
『ぐーんと…』
と、いうことで、
ぐーんと北で、涼しくておいしい(笑)
北海道に行くことに決めていた。
『黒尾さん、
そっちから直接飛行機の方が、
速くて安いんじゃないですか?
新千歳空港集合にします?』
…って言ったら、黒尾さんは一瞬、
『何でそんなとこ似てんだよ…』と
口走り、意味がわからなかった私が
『え?誰かに似てます?』
と聞いたら
『いやいやいやいやいやいやいやいや。』
…と、なぜか"いや"を8回も言い、
その後、呆れたように
『あのさ、出張じゃねーんだから。
一緒にいるための旅行だろ?
集合場所は、千歳じゃなくて、羽田!
一緒に出発するぞ!』
…と言ってくれて、それで、今。
私は、羽田に、いる。
九州から乗り継ぎで
羽田に降りた黒尾さんとは
搭乗待ち合い室で会うことにしていて
私は一人で保安検査場をくぐり、
そこに向かって歩いていた。
いるかな。
先に着いてるかな。
変わってないかな。
会ったら最初に何て言おう…
そんなことを考えながら歩いていたら、
いた。
なんだかすごく懐かしい気がする。
紺色のざっくり編みのサマーニット、
胸元に、薄い色のサングラス。
白いアンクルパンツ。
黒のキャンバスシューズ。
ポケットに手をいれて
壁にもたれかかって。
あぁ…めまいがするほど、カッコいい…
あんな人が、私の彼氏でいいんだろうか…
そう思ったら、なんだか近づけなくて。
動けなくてじーっと見てたら
こっちに気付いた。
目が、合う。
あ、大好きな笑顔。
やばい。
ドキドキが止まらない。
