第27章 ウェディングプランナー
『…お前も夏希も、同じ歳、じゃん?』
『え?あたし?…うん。』
『仕事以外の人生の道、本当にいらないのか、
もう一回、考える時じゃねーの?
…俺、今回、つくづく思ったよ。
自分が思ってるようにいかないことって
いっぱいあんのな。
やりたいことやって生きるのは
勢いでなんとかなるけど、
時々、なんか手離しながらじゃないと
手に入らないものもあるんだな、って。』
…セクハラ、とかそういう風に
とるんじゃねーぞ、と言おうと思ったけど、
早瀬は思った以上に神妙な顔で
返事をした。
『…ありがとう。覚えとくね。』
気持ち悪いほど、素直に。
ちょうど、事務所についた。
ドアを開けながら、いつもの調子で話しかける。
『ま、結婚も妊娠も何もかも、
まずは相手が必要だけどな!』
『うるさい!言われなくてもわかってるっ!』
『研磨に、頼んでやろうか?
早瀬がモテそうな婚活パーティー、
企画してくれ、って。
…お前、どんなテーマならモテる?
プリンヘッド始まって以来の難題かもな。』
『ほんっと、余計なお世話!』
どんなに文句を言っても、
席は隣同士。
俺はパンを、
早瀬はおにぎりを開く。
『あ、早瀬、俺、コーヒー。』
『知りませ~ん。
さっきまで、あたしのこと
さんざんコケにしてたくせに!
自分のことは自分でやる練習しなさいよ。
夏希ちゃんだって、子供、産まれたら、
夜久君のことなんて構ってらんないんだから。』
『けーち!』
『ケチで結構ですっ!』
『あ、マジで自分のお茶だけいれやがった!』
はいはい、手がかかるなぁ、
夏希ちゃんも大変だ…
とかなんとかいいながら
コーヒーを持ってきてくれる早瀬。
『やっぱ、優しいじゃん。』
では、と右手を差し出して。
『コーヒー、300円です。』
『はぁっ?!』
『ウソウソ…今日だけね。お礼。』
『お礼?なんかしてやったっけ?』
『アドバイス代。』
…なんのこっちゃ?
でもまぁ、いつもこんな感じの俺達だから、
特に、気にもしなかった。
この時の俺の言葉が、
予想以上に早瀬の胸に響いていたこと、
結局、それが彼女にある決断をさせたこと、
そんなことはもちろんだけれど、