第7章 メモリアルフォトアルバム
あれから2年。
俺もアキも、
なんとか一人前…に近いくらいの仕事を
任せてもらえるようになり、
自然と結婚の話も出るようになってきた。
『貴大、お願いがあるの。』
『なに?』
『結婚式の写真のことなんだけど、
うちのスタジオの人に協力してもらって、
ちょっと時間かけてとりたい。』
『時間かけるって、どういうこと?』
『結婚式当日の写真じゃないよ。
結婚の記念に、ドレスとタキシード着て
思い出の場所でとる、アルバム用の写真。』
『…よくわかんないけど、
アキがやりたいことなら、俺はかまわないよ。』
美大をやめて
人生に行き詰まっていたアキを
写真の世界に導いてくれたのは、
お姉さんの結婚式の写真が
きっかけだったんだそうだ。
『絵を描くのは、
苦労して自分の世界を表現しても
誰にも喜んでもらえなくて苦しくて…
でも、
お姉ちゃんの結婚式のための
写真撮影を見てたら、
輝いてる人の姿を記録に残すって
なんて幸せな仕事なんだろうって
感動したんだよね。』
アキは、
ウェディングのカメラマンになりたくて
この道に入った。
だから、自分の結婚式のための写真こそ
理想を詰め込んだものにしたい!
…ということらしい。