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ウェディングプランナー(R18) Hi-Q

第27章 ウェディングプランナー



駅が見えてくると、
人通りが多くなってきた。

『黒尾さん、手…』

離して、くれない。

『黒尾さん、』

立ち止まる。
駅の少し手前、小さな川の橋の上。
欄干に背中をつけて立った黒尾さんは
やっと手を離してくれて、

その代わり、両腕を私の腰にまわした。

『ち、ちょっと、くすぐった…』

身をよじる。けど、腕はさらにキツく。

『…からかってます?』

『違う。感謝してる。
トーコとそこで別れたの、
ついさっきのことなのに、
もう、ホントに吹っ切れた。』

『…で、早速、次ですか。
ここに、とりあえず"性別 女"がいたから
手を出しとこう、って?』

『あんたが俺のこと、
どう思ってっか知んねぇけどさ、』

顔が、見れない。

『…ま、いいや。
今、何言っても、説得力、ねぇな。』

自分で言って自分で苦笑してる。

『一個だけ、頼み、聞いてくんねーか?』

『…なんですか?』

『今度あんたが
一人でいたくねぇな、とか
誰かと一緒にいてぇな、と思ったら、
一番最初に、俺に電話して。』

…そんな日が、来るのかどうかも。
いつ来るのかもわからない、
ふんわり、とした約束。

モテる男はこんな手口を使うのか…と
私は結構ヒドイことを思いながら
黒尾さんの言葉を聞いていた。

『な?』

『もし私が電話したとして…
"それがどうした?"とかって
突き放すの、ナシですよ?』

苦笑してる黒尾さん。

『…どんだけ男性不信だよ(笑)
絶対、言わないって約束、する。
だからあんたも約束して。な?
じゃねーと、いつまでも、帰れねーよ?
な?な?』

グイ、グイと
腕に力がこもって。
このままいったら、抱き締められそうだ。
こんな、駅前の人通りの多いところで。

『わ、わかりました、約束しますから!
だから、離して!』

そっと、黒尾さんの力が抜ける。
ふわり、と、体の自由が戻ってきた。

そして、すかさず掴まれる、左手。

『行くぞ!』

駅に向かって走り出す。
今度は私の手をひいて。

"待って"とか
"ちょっと"とか
そういう言葉も言う暇がなかった。

翻るジャケットの裾を見ながら
『カッコいいなぁ…』と思って、

そんで、
『今、私、一生分の運を使い果たしてるかも』
と不幸なことを想像し、

そんな自分に、
『でも、嬉しいくせに。』
と、思った。

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