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ウェディングプランナー(R18) Hi-Q

第27章 ウェディングプランナー



トーコさんの旦那さんは
気にも止めない、といった顔で
ベビーカーを覗き込みながら言った。

『そんなわけあるかよ!
トーコのご両親が、孫の顔を見に
神戸から来て下さっててさ。
今、見送りの帰り。』

『へぇ。』

もともとどんな人なのか知らないから
何とも言えないけど…
なんだろ?
思ってたほどギラギラしてなくて、
ちょっと調子が狂う、というか。

『夜遊びも、今まで大概してきたけど、』

そのご主人がベビーカーから顔を上げる。

『子供出来たら、
夜遊びなんかどーでもよくなった。
家に帰りたくて帰りたくて仕方なくてさ。
な、トーコ、俺、最近、
真っ直ぐ帰るおりこうさんだよな?』

トーコさんが、黙って頷く。

『黒尾も、早く、彼女と結婚しろよ。
そしたらわかるって。』

『…覚えておきます。』

『そうかぁ、黒尾の彼女かぁ。
お前らが結婚する時は、披露宴で
俺に祝辞か乾杯の挨拶、させろよ。
その前に1度、うちに飯でも食いに来い。
どんな出逢いだったのか、聴きてぇなぁ。
トーコ、黒尾は見た通りの色男だから。
きっと武勇伝も多いはずだぞ。』

『…あなた、そろそろ電車が…』

トーコさんが切り出してくれた。

ご主人の肩にそっと触れる左手。

…キレイに手入れされた爪は
ベージュに白のフレンチネイル。
細い薬指に、シンプルな指輪。

『あぁ、そうだな。
早くベッドで眠らせてやらないと。
若者の夜はこれからだろ。
いい記念日にしてやれよ。
家庭もちは、大人しく帰るわ。じゃあな。』

並んで駅に向かう、3人家族の後ろ姿。

…同じ駅に向かって歩けるわけもなく…

私は、黒尾さんの背中を押して
駅の反対側に向かって歩きだした。

一歩。
二歩。

…女の勘、というか。
確信がある。

必ず、トーコさんは
1度、こっちを振り返る。

私が本当の彼女じゃないこと、
もしかしたらトーコさんは
感づいてるかもしれない。

きっと、
黒尾さんが荒れてないか、
私達が仲良く歩いてるか、
それを背中を見て確認するはず。


その時、黒尾さんは、
幸せそうでいなくちゃいけない。




二人が本当に、
心からさよならするために、

私がたった1つ、出来ること。



『黒尾さん、』



…私から、手を、繋いだ。…




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