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ウェディングプランナー(R18) Hi-Q

第27章 ウェディングプランナー



…夜の街角で名前を呼ばれた瞬間、
黒尾さんの体が固まったのが、わかった。

どうしたの?

声の方…黒尾さんの視線を追う。

そこには、
颯爽とした、40代中盤に見える男性


と、


ショートヘアの、スタイルのいい女性。
派手ではないのに輝いて見えるのは、
本当に上質の美人だから、だろう。


すぐにわかった。


…この人が、トーコさん…


一瞬、薄い氷のように
空気が冷たく張り詰めた、と思った。

きっと、トーコさんも同じ気持ちだ。

黒尾さんの表情の下に
尖ったオーラを察知したのも、
きっと私とトーコさん、同じ。

ただ一人、
何も知らないトーコさんのご主人が
ほがらかに、話しかけてくる。

『黒尾、今日は帰りが早いと思ったら、
なんだ、デートだったのか!』

…違う。
黒尾さんはパーティーの幹事だったから。
私は、その会場の1スタッフです、

そう言おうと思ったのに
黒尾さんの方が、先に口を開いた。

『はい、今日は記念日なので。』

!?

…黒尾さん、そんなウソ、ついちゃダメだよ。
きっと後悔する…

『へぇ、優しいじゃん。
あ、これ、うちの妻。トーコ。』

『あなた、ほら、
引っ越しの手伝いに来てくださったから…
1度、お会いしたことあるわ。
…その節は、どうも。
主人がいつも、お世話になってます。』

『…お久しぶり、ですね。』

『そんでほら、こっちがうちの長男。
お宮参り、済ませたばっかりな。』

…気づかなかった。
トーコさん、ベビーカーを押してる。
中でスヤスヤ眠る、小さな命。

空気が、変わった。

黒尾さんが、魔物に、取りつかれる。
口からこぼれる、闇のような言葉。

『…へぇ。こーんなちっちゃい子、連れてまで
自慢の奥さん見せびらかすために夜遊びですか?』

ちょ、ちょっと、黒尾さん?!

表情こそ変わらないものの、
トーコさんがヒヤリとしているのが
私にもわかる。

…思わず、黒尾さんのジャケットの後ろを
ツンツン、と引っ張る。

落ち着いて。
ここでボロ出しちゃ、絶対ダメ!
黒尾さんの男のプライドの為じゃなくて

トーコさんとベビーの為に、
我慢して、お願い、黒尾さん!

…もう、本当に祈る気持ちだった。

黒尾さん。
黒尾さん。

落ち着いて!
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