第27章 ウェディングプランナー
『黒尾さんみてぇなモテ男はさぁ、
女から言い寄ってきたり、
ちょっと口説けばコロッと墜ちたり
そんなんばっかりなんだろーな。』
…まぁ、そう言われれば、そうだ。
『ふとした時に気になったりとか、
好きなものを共有してみたくなったりとか、
相手の気持ち想像して胸が苦しくなったりとか、
普段はすぐ手を出すのに
なかなか触れられなかったり、とか
黒尾さん、そーいうの全部、"恋"だぞ。』
テカテカ頭で
焼酎のはいった湯飲みを持った大将が
真面目に"恋"について語る姿は
どう見ても笑える。
…でも、大将がいう場面の一つ一つ、
思い当たることばかりで。
『恋?俺が?彼女に?』
『そーだよ。
モテ男の名がすたるかもしんねーけど、
あんた今、"恋する男"だよ。』
『マジ、大将、やめて。それは言い過ぎ。
珍獣、セミ。好奇心だって。』
『ま、それでもいいや。好奇心って字には
"好きな心"が入ってるから。許してやる。』
『大将に許してもらわなくても…』
『素直じゃねぇなぁ、反抗期か?』
『だいたい、向こうだって俺にさっき…』
『なんつった?』
『俺が結婚する時は、
自分にプランナーさせてくれ、って。』
『…意地らしくて涙でるや。
客じゃなかったら、あんた、ぶん殴る。
女の子にそんな気、使わせんなよ。』
『…自分に会うより、早く彼女探せ、って…』
『黒尾さんのこと、好きだから、だろ!
…これひとつ見てもわかるってもんだ。』
俺が預かってきた焼酎。
『黒尾さんが重くないように
このサイズにしたんだよ、きっと。
電車で運びやすいように、
わざわざ持ちやすい取っ手の袋、買ってさ。
割れたら面倒かける、ってしっかり梱包して。
俺が黒尾さんに礼とか頼んだら
却って手間かけることになるから
大げさにならないように、っていう
気遣いのかたまりじゃねーか。
…俺にくれてっけど、
気持ちは全部、黒尾さんに向いてるんだよ。
コレ選ぶ間、考えてたのは、
俺じゃなくて黒尾さんのことだって。』
…"贈り物は、相手を思う気持ち"
彼女の言葉を思い出す。
相手は、俺?…
『黒尾さん、認めなくてもいいけどさ、
そんならそんで、
中途半端に優しくしたりするんじゃねーぞ。
恋だと認めないなら、
もう、今後一切、放っておいてやんな。
認めるなら、
…一生、手離すな。』
