第27章 ウェディングプランナー
2駅分の夜道を、一人で歩く。
知らない町の夜の空気は
思ったより冷たく感じて
思わず、ポケットに手を突っ込む。
寒いな…
初めて通る道。
ふと目についた沿道の細い並木は、
桜、みたいだ。
この桜が咲く頃、
俺は、トーコの旦那の部下になる。
それがずっと憂鬱だったのだけど、
もう、
そんなことはどうもよくなっていた。
俺のは、自分で蒔いた種だ。
自分で責任、とらねーと。
…彼女の話を聞いて、
甘えていた自分を思い知らされた。
歩きながら、ずっと、考える。
"恋の傷は、
新しい恋をすることでしか
治すことが出来ない"
…そう言ったのは
どこの誰だったか。
恋をして傷付いて。
また次の恋をして、
さらに傷付いて…。
彼女も今度こそは
今までの傷を全部、
治せるような恋が
出来るといいのに。
もちろん、俺も。
ふと、空を見上げると
月のない、闇夜。
…だから、力が出ないのだろうか。
新しい恋を始める力も、
傷付いた誰かを助ける力も。
苦笑いしてしまう。
これじゃ、オオカミどころか
迷える子羊だな。
先に結婚していった
仲間や後輩たちの顔が思い浮かんだ。
みんな、すげーや。
たった一人を探し当てたんだ、すげぇ。
結婚までたどり着いたことも、すげぇ。
愛し抜く覚悟を決めたことも、すげぇ。
結婚生活を維持してることも、すげぇ。
…お前ら絶対、その人、裏切るんじゃねーぞ。
なーんてな。
もうアイツラの方が、
俺なんかよりずっと一人前だ。
俺…
誰にも必要とされなくなっちまったかな?
自分の居場所、
ちゃんと自分で探さねぇと。
…俺の住むマンションが見えてくる。
なにも答えは見つからないまま。
二駅分の距離は
遠くも近くもない中途半端さで。
今の俺の弱さを
思い知らされたようだった。
もっと、強く。
きっと、もう少し。
答えは見つからなくても
考えることをやめたら、終わりだ。