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ウェディングプランナー(R18) Hi-Q

第27章 ウェディングプランナー



…カシャリ、と音がして
手に、冷たい感覚。。

自分でも気付かないうちに
ビールの缶を握りしめていて
中から溢れたビールが
手の甲を濡らす。

淡々と話す彼女に
言葉が見つからなかった。
いっそ、
泣いたりしてくれたら
まだやりようがあるのに。

彼女は勝手に話をまとめて
先に寝る、と部屋に入っていったけど
俺はまだ、ベランダから動けないでいる。

俺とトーコも、不倫だった。
俺とトーコも、唐突な別れだった。

でも、
俺はトーコが人妻だと知ってたし
いつか終わりがくる、とわかってた。
それでも、突然の別れは
相当ショックだったんだ。

…ダメだ。
彼女の気持ちを想像しようとしても
俺の胸の方が痛んで先に進まない。

振り返ると、そこには
右足だけのスリッパが、ぽつん、と。

さっきまで、彼女がはいてたものだ。

彼においていかれた彼女のように
ぽつん、と。

そう思ったらいたたまれなくて。
早く、ペアにしてやらねぇと。

俺がはいていた左足のスリッパを
丁寧に横に並べ、
ピッタリとくっつけて置く。

部屋に入って何気なく見回すと、
本棚の雑誌は…ほぼ、ウェディング関係。

そういえば、前、
『休みの日は、飲みながら
雑誌読んで過ごしてる。』と言ってた。

自分は諦めた結婚を
手伝い、祝福するのが仕事の彼女。

…ふと、思い出す。
夜っ久んと夏希の結婚式。

夜っ久んは、土日に働くことを
夏希に理解させてほしい、と
夏希は夜っ久んに
1日、手を繋いでて欲しい、と
彼女に頼んだそうだ。

それは彼女にとってどちらも、
失った恋の傷そのものの願いで。

自分が手にいられなかった幸せを
目の前でクリアしていく人達を
毎週見るって、どんな気持ちなのだろう。

…聴いてみたかったけど、やめた。
ここは彼女のお城だ。
彼女の気持ちを乱すような話は
しないでいてやりたい。

例え彼女が目を覚ましたとしても
何を話していいかわかんねぇ…
そう思い、
始発を待たずに、歩いて帰ることにした。

目が覚めたとき、俺がいなければ
俺がここに来たのは夢だった、と
思わないだろうか。

むしろ、そう思ってほしかった。
彼女の痛みをを
誰より理解してやれる立場のはずなのに
なんの言葉もかけてやれない自分が、
本当に、情けない。



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