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ウェディングプランナー(R18) Hi-Q

第27章 ウェディングプランナー



『どうぞ。』

部屋は、
少し広めのワンルームだった。

壁際に向かって小さなキッチン。
そのキッチンとリビングとの
ちょうど境目辺りに
二人掛け用の小さなテーブルセット。
壁際に、シングルベッドと、ソファ。

どれも、まだ新しい。

『モノ、ねぇな。』

『収納と景色に
お金払ってるような部屋ですから。』

よく見ると、壁一面が全部、
大小の扉になってる。

『ビール、飲みません?』

駅までガツガツ歩いたからか、
確かにのどがかわいた。

『もらう。』

冷蔵庫から缶ビールを2本取り出した彼女は
サーッ…と
カーテンと大きな窓を開けて振り向くと、


はい、黒尾さんは左足、と、
ベランダ用のスリッパの左足分を差し出し、

彼女は右足、俺は左足だけスリッパをはいて
ベランダに出た。


『へぇ…』

知らなかったけど、
ここは結構高台らしい。
道を挟んだアパートの屋根は
このベランダより低く、
その向こう側に街の明かりが煌めいていた。

『ここに引っ越して、2年になります。』

『ふーん…』

プシュッ。
彼女のビールの缶が開く。。

コクコクコク…
隣から聞こえるのは
ビールならではの、
勢いのある、軽快なノドの音。

『…ふうっ!』

…外で会うときと比べて
すごく居心地がよさそうだ、と思った。
ここは、彼女の城、なんだろう。

2年前。
前の男と別れて2年、って言ってた。
それが
引っ越しのきっかけだったんだろうか。

顔を見ては聞けないことも、
二人で夜景に向かってなら
なんとなく、聞けそうな気がする。

『…何が、あった?』

そう問われるのを待っていたかのように、
彼女の口が開いた。

『つまんない失恋話、聴いてくれます?』

『あぁ。』

…会って間もない俺の失恋話を
身体まで委ねて聴いてくれた。

話しただけで、心が軽くなる。
よく知ってる相手じゃないほうが
話しやすいこともある、って
あんたが教えてくれたから。

今度は、俺に聴かせろよ。

『ほんと、つっまんない失恋話ですけど。』

…温度がない言葉で淡々と。
過ぎたことだと悟ったように。

わかっているけど立ち上がれない自分を
蔑むように。

人に言われる前に
自分で『バカでしょ。』と
言ってしまえるように。

…言葉の剣で
自分を守り、自分を傷つけながら。

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