第27章 ウェディングプランナー
夜っ久んたちと別れて駅に向かう。
帰るには少し早いけど、
アイツラを二人にしてやりたくて。
…夜に外でデートって、
結婚したらなかなかしないだろうから。
駅のホームに着いて、驚いた。
彼女だ。
耳にはイヤホン。
熱心に、手帳に何かメモしている。
後ろに近づいて
左肩をトントン、と叩く。
あの時みたいに、
振り向く彼女の左頬に刺さる、俺の人差し指。
プウッ、と膨れる両頬。
…おもろいヤツやなぁ…
両手が手帳とペンで塞がってるから
俺がイヤホンをはずしてやる。
『何でここにいんだよ?』
『え?私?仕事の帰りですけど?』
あぁ、そうか。
あの会場の最寄り駅。
『黒尾さんこそ何してんですか?
は?!もしや一回寝ただけで
私のストーカーじゃないですよね?』
『バーーーーーカ!』
両頬を思いきり引っ張ってやった。
ホントに発想が極端だな。
女友達、少ねぇタイプかも。
俺は、オモロイから嫌いじゃねぇけど。
『夜っ久んたちと焼酎の打合せしてたんだよ、
あのカフェバーで。』
『あぁ、それなら納得。ビックリしました。』
いきなりストーカー扱い、
俺の方がビックリしてるって(笑)
…電車が入ってくる。
『ほら、乗るぞ。』
『帰るんじゃないんですか?
方向、違いますよ?』
『あんた、飯、まだだろ?
食ってこうぜ。ほらほら。』
『…でも黒尾さん、
ランコントルで食べてきたばっ…』
背中を押し、無理矢理電車に押し込む。
『…なんで、こーなってますかね?』
幸い並んで座ることができた。
電車はもう、動き始めている。
『俺、約束守る、って言っただろ?』
『…何か、約束しましたっけ?』
彼女の耳元に口を寄せる。
『したんだよ。ベッドの上で。』
『?』
『また逢おう、って。』
『?』
『あんたが
"その場かぎりの優しさはいらない"って言うから
また逢う約束して、
優しく優しく抱いてやっただろ?』
ぽわぁっ…と、
ショートヘアからのぞく耳たぶが
赤くなった。
『も、申し訳ないですけど私、
今日から…り……うですから。』
電車の音で、聞こえない。
『え?』
口元に、耳を寄せる。
『…私、今日から、生理中ですから。』
思わず笑ってしまう。
『飯食うだけだって(笑)』
ホントに、俺の周りにいる女とは違う。
…単純に、面白い。
