第27章 ウェディングプランナー
『…うぅ…何がいいかなぁ…
んー、何かねぇかなぁ…』
例の婚活パーティーから
…つまり夏希の誕生日からも…
1ヶ月ちょっと。
ご心配をおかけしたかもしれませんが、
(あれ?心配しただろ?え?してない?)
夏希は怒ってませんでした。
むしろ、クロと早瀬を
二人、店に残してきた、と言ったら
『あの二人、くっつけばいいのに!』と
無責任に楽しんでたくらい。
『いや、どう考えてもそれはないだろ。
だってクロは髪の長い女がタイプだって
言ってたじゃんか。』
『それ、高校時代の話でしょ?』
『そうだけど…でも、なんつーか、こぅ、
クロの相手だったら、もっとエレガントで
大人の女って感じじゃね?
早瀬は、正反対だって。』
『そうかな?
確かにそういう女性、似合うと思うけど、
クロは世話焼きだからさ、
大人の女に可愛がられるだけじゃ飽きそうだよ。
むしろ早瀬ちゃんみたいな
サバサバしてて恋愛に興味なさそうな女子を
飼い慣らす方が、クロっぽい。』
『…飼い慣らすの、得意そうだな…』
『トラとか獅子とか犬とか(笑)』
…そうやって話がもりあがったから、
ついつい気になって、
翌日、お代を半分支払いながら
あの後どうしたか、早瀬に聞いてみたら、
飯食って、店の前で解散した、って。
だろ?だよな!
うん、あの二人は、ありえねー。
クロは大人だし、
早瀬は、色気ナシの仕事人間だし。
夏希の妄想、カスリもしねーって(笑)
…いやいや、そんな1ヶ月も前の話は
どうでもよくて!
俺は、今、頭を抱えている。
3か月後、うちの会場で猫又監督の
"監督就任40周年記念パーティー"
をやるんだけど、俺、その幹事の一人で。
監督に贈る記念品のことで
頭を抱えてるとこ。
ありきたりでなくて、
喜んでもらえて、
記念になるもの。
夏希の誕生プレゼントですら
いつも頭を悩ませてる、というのに。
そんな大層な記念品、
俺ひとりで決められるわけねぇじゃんっ!
『夜久君、すっごい顔してる。
どっか痛い?
それとも、夏希ちゃんがついに
家出でもしちゃったの?』
筋違いなうえに失礼なことを
のんびりと言いながら
隣の席から俺を覗きこんできたのは、
…早瀬。