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ウェディングプランナー(R18) Hi-Q

第27章 ウェディングプランナー



支払いを済ませた彼女が
スマホを鞄から取り出し
チェックしながら店を出てくる。

そのスマホを、
ひょい、っと取り上げた。

『ちょ、黒尾さんっ?!』

さっきの一瞬の闇の声とは違う、
普段の明るい声に戻ってる。

『なーにすんですかっ!
もうっ、返してくださいよ!』

…どんなに彼女が
ジャンプして取り返そうとしても、
両手をあげた俺には到底、届かない。

そのまま、
通話画面を呼び出して操作する。

『何すんですかっ、ちょっと!』

はい、とスマホを返して。

『通話の履歴、見てみ。』

…画面を操作している彼女。

『あーっ?えーっ?なに、これ!
勝手に、誰にかけたんですか?!』

『それ、俺の番号だから。』

『はーっ?なんでっ?』

笑いながら、答える。
できるだけ、シリアスにならないように。

『…気持ち、弱ってるときは
一人にならない方がいいぞ。
特に夜なんて、ロクなこと考えねー。
飯くらいつきあうから、連絡して。
それから…』

さっきの話。
話題を振ったのは、俺だ。
ちゃんと、答えねーとな。
…答えに、なってねーかもしんないけど。

『自分のこと、
ノコリモノなんて、言うな。な?』

本当なら、
ちょうどいい高さにある彼女の頭を
ポンと小突きたい気持ち。
でも、
彼女にそれは出来ない。

…一人で生きる覚悟がある女性に、
そんな扱いは失礼だろ。

スマホを握りしめる、彼女。

『電車?駅まで送る。』

『いえ、大丈夫です。
寄り道して帰るから…
今日はお世話になりました。』

深く下げた頭をスッとあげると
クルッと踵を返して
反対側へ歩いていった彼女。

…こっちから、深追いはしない。
多分、電話もかけてこないだろう。

でも、
気にしてくれる人間が一人いるだけで
救われることが、絶対ある。


…そこまで考えて、苦笑いしてしまった。
俺、偉そうなこと言えた柄じゃねーよな。
ゆうべも、知らない女、抱いて
自己嫌悪に陥ってたのに。

俺、いつからこんなに
おせっかいになった?

でも、なぜだろう。
自分の姿を見ているようで、
放っておけなかった。

小さな傷は広がりはしない。
ただ、深く深く。
心を凍らすようにジリジリと
内側へ内側へと忍び込んでくる。

そんな心の痛みに慣れてしまって、
外で平気な顔が出来る俺に
どこか似てる、と思ったんだ。

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