第27章 ウェディングプランナー
『本当に、ありがとうございました!』
今、私は
ドッと疲れた頭と体のまま、
テーブルにつくほど、頭を下げている。
隣で、夜久君も、同じように。
ここは、あのカフェバー"ランコントル"
頭を下げている相手は、
夜久君と研磨さんの友達の、黒尾さん。
『いいってば。
俺を呼び出すくらいだから、
夜っ久ん、よっぽど困ってたんだろ?
ましてや研磨も関わってるんだし。
主将はチームの世話係だからさ(笑)
気にすんな。』
…例の、婚活パーティー。
どうしても男性があと一人足りない、
というピンチに、
夜久君と研磨さんが
電話攻撃で呼び出してくれたのが
黒尾さんだった。
用件は告げず、
『クロにしか頼めないっ!』という
夜久君の切羽詰まった呼び出しと、
研磨さんの
『クロ、出番だよ。』というアヤシイ誘いに
何事かとやってきた黒尾さん。
夜久君が
"こういう場に向いてないヤツ"と言うから
もっとマニアック(笑)な人を想像してたら
その逆の人だったから、驚いた。
『ねぇ、なんで“こういう場にむいてない”の?
むしろ、エース級じゃない?』
『始まれば、わかるって。』
…その時は意味不明だと思っていた
夜久君の言葉だったけど、
確かに、パーティーが始まってみたら
すぐに納得がいった。
モテすぎる、のだ。
今日の婚活のテーマは"ジャンプ好き"。
…飛ぶ"ジャンプ"じゃなくて
マンガの"ジャンプ"ね(笑)
なんとかいうバレーマンガの
人気キャラに似てるらしく、
女性参加者の多くが黒尾さんを気にしてる。
それなのに、本人は全く、浮いた気配がない。
背が高くてイケメンで、
ラフな格好なのにおしゃれ、
さらに、商社勤務。
ゲームをしても勝っちゃうし、
お酒を飲んでも絵になるし、
しかも、
どの女性に対しても平等に、
紳士的に話し相手をする。
婚活なのにギラギラしてない。
(助っ人だからね…)
そこがまた、却ってスマートに見えて。
こりゃ、確かに"男の敵"だわ…
婚活パーティーに来る必要、ないでしょ(笑)
だけど確かに、
黒尾さんのお陰で数も間に合ったし
参加者のコミュニケーションも活発で
これまでになく盛り上がった
パーティーだった。
そんなこんなのお礼で
今、私と夜久君は、頭を下げている、
というわけで。