第8章 あなたがくれたもの*ゼノ*レオ*ジル
<ジル×リボンのソールサンダル>
「今日はまだ目を通す書類があるので、先に休んで頂いて構いませんよ?」
そう言われても彼の帰りを待ちたいもの。
寝る支度を整えて本でも読みながら待とうと、ベッドに入った時。
昨日のジルとの一夜を思い出す。
そして紫色のリボンがついたサンダルに目を移した。
「たまにはこういうのもいいでしょう?」
靴を履いたまま彼に触れられ愛されたというシチュエーション。
いつもと違う感覚に妙に敏感になってしまった自分が何だか恥ずかしかった。
「そういえば…。」
ベッドから出てサンダルを履いてみる。
「何でジルはこんなにヒールが高いものを選んだんだろう…。」
確かに可愛らしいデザインでお気に入りではあるサンダルだけど、他の靴に比べて大分背が高くなる。
「、まだ起きていたんですか?」
「うわぁっ!ジル…。お帰りなさい!」
気を遣ってか、ノックの音が小さくてジルが部屋に戻ってきたことに気付かなかった。
「何に首を傾げていたんですか?」
「そうそう!何でジルはこの靴を選んだのかなって思って。私の靴の中でもかなりヒールが高いから…。」
「そんなの単純ですよ。…その靴を履くと背筋が真っ直ぐに伸びませんか?」
「…確かに!」
ヒールが高い分バランスをとろうとして、いつもよりも姿勢が良くなっていることを感じた。
「プリンセスとして、美しい姿勢を保つことも重要ですから。」
「…ジルはやっぱり教育係ですね。」
ちょっとだけ彼が答えた理由が残念で、 声色にその気持ちが表れてしまった。
そんな私の表情も見て、彼は目を細めた。
「…まぁ、それは建前上の話です。目線の位置が当然ですが変わっていませんか?」
「はい。…いつもよりジルの顔が近いです。」
約10cmほど身長が高くなったことで、彼の妖艶で整った顔が近くて私の鼓動をうるさく響かせた。
「あなたから私に口づけをしてください。」
「えっ!?…う、わかりました。」
初めてのことではないけれど、いつも彼からしてもらうのでとても緊張してしまった。
意を決して彼の頬に両手を添え、優しく彼にキスをした。
「この靴を履いていると、私にキスがしやすくなるでしょう?」
唇を離すと、彼がわかりきったような顔をしてふっと笑みを浮かべていた。