第8章 あなたがくれたもの*ゼノ*レオ*ジル
<ゼノ×スケッチブック>
今日は少し遠出をして、シュタインの名所の一つである一面に広がるお花畑に足を運んだ。
「ここに来るのは久しぶりだな。…中々一緒にいてやれなくてすまない。」
「そんな!こうして時間を作って頂けるだけでも、私は嬉しいです。」
「…ありがとう。」
ふっと優しく微笑み、ゼノ様は私の唇に軽く唇を重ねた。
この場所が私たちは二人とも好きで。
私が記憶をなくしてしまった時に、彼のもとへと導いてくれたのはスケッチブックに書かれたこの花畑だった。
休みの日には、ここで二人で絵を描くことも多い。
彼が走らせる鉛筆から滑らかに線が描かれ、気が付くと美しい風景がスケッチブックに広がっていた。
「ゼノ様が生み出す絵はやっぱり素敵ですね!私、ゼノ様の風景画すごく好きです。繊細で、それでいて忠実で…。」
自然と思いを言葉にすると、彼は少しだけ頬を染めて口許を緩めた。
「俺もの絵は気に入っている。淡く優しい色使いに内面が映し出されているようだ。」
片側の目が隠れてしまっていても、嘘のない想いだとその目を見ればはっきりと伝わってきた。
「…私がこんなに穏やかな気持ちでいられるのは、ゼノ様がお側にいてくださるからですよ?」
「俺もだ。お前が隣にいると、心が何故か暖かくなる。…二度と俺から離れるな。」
そう告げると、彼はそっと私の肩を抱き自分の方へと引き寄せた。
身を任せるように彼に寄り添い、お互いの温もりを感じた。
見上げると彼も私を見つめていて、どちらともなく唇を寄せた。
「もう離さない」
そう伝えるように何度も捧げられる甘い口づけで、私は満たされていった。