第35章 私だけの王子様*ルイ*
もう何度足を運んだかわからないほど、馴染みになった孤児院に今年一年の締め括りの挨拶へと二人で伺った。
「あ!プリンセスだー!」
「ルイおにいちゃん、こんにちは!」
顔を合わせるたびにキラキラした笑顔で駆け寄ってくれる子どもたちに愛しさを感じていると、横目で見えたルイの表情も綻んで柔らかくなっていた。
「こんにちは。今日は何したい?」
ルイが優しく声をかけると、子どもたちはもう決めていたようで、一人の男の子が明るい声で返してくれた。
「んーとね…みんなでかくれんぼ!」
「うん、やろうやろう!じゃあ私が鬼になるから、100数える間に皆隠れてね。…ルイも。」
「わかった。…が絶対見つけられないところに隠れるから。」
「見つけるよ、絶対。」
ルイが不敵な笑みを浮かべるものだから、私も負けじと答えた。
数字を唱えるたびに皆の足音や声が遠くなっていき、50を越える頃にはすっかり辺りは静まり返っていた。
100を言いきった後、振り返ってみると早速木の陰に隠れている男の子の小さな背中が見えて、思わずくすりと笑みが溢れた。
足音を立てないように近付いて、背後から声をかけた。
「レン、見ーつけた。」
「あー…みつかっちゃった…。」
見つけたのはレンという院で一番幼い男の子だった。
眉を下げてしょんぼりするレンの頭を撫でて、一つ提案をしてみた。
「じゃあ私と一緒に皆を探しに行こっか。」
「うん!」
私よりもずっと小さな手をとって、ゆっくりと院内を歩き始めた。