第32章 Love Letters*ジル*レオ*ゼノ*
〈ジル〉
プリンセス就任1周年のセレモニーを終えて、部屋で一息ついていた。
別の目的でウィスタリア城に忍び込んだのに、まさか自分がプリンセスになってしまうなんて。
この目まぐるしい1年を思い返していると、部屋の扉が叩かれる音がした。
「、お疲れ様でした。」
「ジルこそお疲れ様でした。セレモニーの取りまとめ有り難うございました。」
セレモニーの時は慌ただしくてあまり一緒にいられなかったので、我慢出来ずにジルにぎゅっと抱きついた。
「…そんなに私に触れたかったのですか?」
「…近くにジルがいるのに、側にいられないのは寂しかったんです。」
「それは私も同じですよ。」
私の腰に腕を回して自分の方へと優しく抱き寄せると、額に唇を寄せてくれた。
「貴女はこの1年で見違えるほどご立派になられましたね。」
「ジルがいてくれなければ、私は今日を迎えられなかったです。…本当にありがとうございます。」
私はジルの瞳を真っ直ぐ見つめて感謝の気持ちを伝えた。
私をプリンセスに選んだのも、人生のパートナーとして選んだのもジル。
これから先、ジルが隣にいないことなんて考えられないほどだった。
「大好きです…。」
「…1年経ってもそういう可愛らしいところは変わりませんね。そんなことを言って…どうなっても知りませんよ?」
ジルは妖艶な笑みを浮かべると、私を横抱きにしてベッドへと運んだ。
ベッドに私の体をゆっくりと寝かせると、ジルはジャケットを脱いで私の上に覆いかぶさった。
「今夜はずっと一緒ですよ。今日は貴女に出会って1年の記念の日ですから。」
その言葉が耳に届くと、唇が重なり熱が伝わってきた。
ジルの指や唇に翻弄されながら、長い長い夜はあっという間に過ぎていった。
−−−−−−−−−
目を覚ますと、既にジルの姿はなかった。
いつも私より朝が早いのは分かっているので慌てはしないけれど、やはりどこか寂しかった。
すると枕元に綺麗な箱と手紙が置かれていた。
箱を開けると綺麗なレースの刺繍があしらわれた服が顔を覗かせた。
そして手紙に目を通せば端麗な文字が並び、その言葉に私はまた胸をときめかせた。
ジルも同じことを思っていてくれた。
離したくないと思う気持ちはより一層強くなっている。
これからもずっと、愛しています。