第28章 Love Letters*ルイ*ユーリ*アラン*
<アラン>
就任一周年の記念セレモニーを終えて、私とアランは馬に乗って城から少し離れた湖を訪れた。
遠くにはウィスタリア城が淡い光に包まれていて、湖は鏡のように今宵の月を映している。
「ほら。」
「ありがとう。」
差し出された手を取り、ゆっくりと馬から降りようとすると、アランが逞しい腕で抱き寄せてくれた。
そのまま顔が近付きどちらともなく唇が重なれば、自然と笑みが溢れてしまう。
「お前と会って1年か…。」
「ね。…何だかあっという間だったなぁ。」
「後にも先にも城の塀登ろうとした女なんてお前くらいじゃねぇの?」
「…!それはもう忘れてっ!」
恥ずかしい出会いを思い出して、からかうアランをぺしっと叩いた。
あの時はまさかアランと恋をして、一緒に同じ未来を歩むことになるとは思ってなかった。
「…そういえば。」
「何?」
アランは荷物の中から箱を取り出して私に差し出した。
「就任一周年だろ?…よく頑張ったな。」
「あ…ありがとう!…開けていい?」
まさか贈り物をもらえるなんて思っていなくて、嬉しさもその分倍増した。
アランが頷いてくれたので箱を開けると、そこには綺麗な髪飾りと一通の手紙が入っていた。
「…可愛い!アラン、ありがとう!」
「…どういたしまして。」
嬉しくて髪に付けようとしたけれど、鏡がないから上手く付けられない。
するとアランが見かねて私から髪飾りを取って、そっと髪に付けてくれた。
「…似合う?」
「あぁ。…いいんじゃない?」
アランが優しく微笑んでくれたものだから、もっと嬉しくなって手紙に手をかけた。
「お前…!今読むのかよ!」
「今だから読みたいの。」
恥ずかしいのか赤面しながら頭を抱えるアランを横目に手紙に視線を落とした。
アランらしいしっかりとした文字で刻まれていたのは、側にいることへの感謝。
そしてずっと傍にいてほしいという願い。
「アラン…。」
読み終わって顔を上げれば、アランは私に顔を向けずに照れくさそうに視線だけくれた。
「…何だよ。」
「アランから離れられるわけないよ…。だってアランがいないことなんて考えられないもん。」
「…俺もだ。…、愛してる。」
言葉と同時にくれたものは、唇から伝わる言葉にならない愛する気持ち。
ずっと、ずっと一緒だよ。