第23章 12月7日*ゼノ*
扉の向こうから、もう覚えてしまった足音が聞こえてきた。
ユーリとアルバートと一緒に息を潜めて、ゼノ様がいらっしゃるのを待つ。
足音が止まり、ゆっくりと扉が開いた。
「ゼノ様、お誕生日おめでとうございます!」
二人がクラッカーを鳴らし、私が花束を渡すと、ゼノ様が部屋の中を見て目を丸くしていた。
「これは…。」
テーブルの上には私が作ったバースデーケーキとゼノ様の生まれ年のワイン。
部屋の中は風船や紙で作った飾りで華やかにしてある。
「私が城下にいた頃、こんな風に皆からお祝いしてもらったんです。ゼノ様がやったことのないバースデーパーティーをしたくて…ユーリとアルバートに協力してもらったんです。」
「俺たちは少しお手伝いしただけだよ。…じゃあ、俺たちは行くね。アル、お邪魔しちゃ悪いよ。」
「わかっている。…ではゼノ様、良い誕生日をお過ごしください。」
ユーリがアルバートの背中を押しながら、部屋を出ていった。
気になるのは、ゼノ様が先程から何も仰らないこと。
「あの…ご迷惑でしたか?」
私がゼノ様の様子を窺うように尋ねると、ゼノ様は口元に穏やかな笑みを浮かべた。
「いや…こんな風に祝ってもらったことがないからな。…嬉しいものだな。」
「良かった!ゼノ様こちらへ…」
ソファーへ案内しようとすると、ゼノ様は私を後ろから抱き締めた。
「、感謝する。…これほどまでに幸せな誕生日は初めてだ。」
「ゼノ様…。」
後ろを向くと、少し頬を赤らめて笑うゼノ様と視線がぶつかった。
引かれ合うように顔が近付き、吐息がかかる距離でゼノ様はそっと囁いた。
「…愛している。」