第19章 魔法にかけられて*ユーリ*
「ふぅ…。」
ダンスレッスンを終えて、部屋に戻り一息つく。
明日プリンセス制度制定の記念舞踏会が開催される。
隣国の多くの貴族の方々が招待されていて、もちろん私は主賓となるので、ダンスの失敗は当然許されない。
そこでこの1週間はずっとルイにダンスレッスンをつけてもらっている。
ルイに「良くなってきてるよ」とは言われたけど、まだまだステップは間違えるし、途中でバランスを崩すことも多い。
外交も兼ねているので、私自身の失敗はウィスタリアへの失望にも繋がる。
苦手なダンスを披露しなければならない舞踏会は…正直かなりの重荷。
ソファーにもたれ掛かり、ぐったりしていると、部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。
返事をすると、お茶の用意を持ってユーリが入ってきた。
「様、ダンスレッスンお疲れ様。ごめんね、少し遅くなっちゃって。」
「ううん。私も今戻ってきたばかりだから。」
ユーリが紅茶を淹れてくれている間も、どこか心ここにあらずの私。
「様?お茶入ったよ。」
声をかけられて、はっと我に返った。
紅茶の優しい香りと心地よい温度が、私の疲れた身体と心にじんわりと染み渡る。
「…ちょっと疲れちゃった?」
気持ちが少し落ち着いたところで、ユーリが私の顔を覗き込んできた。
いつも側にいてくれるユーリには、すべて見透かされているようで、ついつい弱音を溢してしまう。
「…ダンス自信ないの。もし失敗したらどうしようって…舞踏会の前はいつも不安。」
落ち込む気持ちを隠しきれず俯いていると、ユーリが私の頭をよしよしするように撫でた。
「様のダンスすごく上手くなってるよ。側でずっと観てる俺が言うんだから間違いない。大丈夫。」
プリンセスとして公には言えない弱音も、ユーリは否定せずにきちんと受け止めてくれる。
「…うん。ありがとう。明日頑張るね。」