第18章 11月11日【甘裏】*ジル*
ここ数日私の頭を悩ませていることがある。
もうすぐジルの誕生日。
初めて迎える誕生日だし、気合いを入れてプレゼントを贈りたいけど…。
何か欲しいものがあるか尋ねるのもつまらないし、きっとジルはうまくはぐらかす気がする。
そもそも最近公務が立て込んでいて、プライベートなことをゆっくり話す時間もない。
「甘いものが好きだから…ケーキは焼くでしょ。当日も公務だし、渡す時間ないかも…。」
その時ふと「時間がない」ということが引っ掛かっていることに気が付く。
予定を確認すると、当日の昼間はジルの礼儀作法のレッスンの時間がある。
「そっか…。」
あることを思い付き、私はジルの執務室へと向かった。
扉をノックすると、落ち着いたジルの声で返事が聞こえた。
部屋に足を踏み入れると、ジルは少し驚いた様子で僅かに目を見開いた。
「、どうしたのですか?…あぁ、今は休憩時間でしたね。」
「はい。…あの、ジルにお願いがあるんですけど……。」
「何ですか?」
「11日の昼間のレッスンの時間を私に頂けませんか?」
ジルはその提案に、ふっと柔らかい笑みを浮かべた。
「…と、いうことはその時間のレッスンの分まで前日までに終わらせる、ということですね?」
「はい!」
「わかりました。まぁ、10日にはネーブルズでの食事会もありますし…。確実に習得していただくために、少し手解きを厳しくいたしますが、宜しいですか?」
「は…、はい!頑張ります!」
ジルの笑顔に少し背筋が凍ったような気がした…。
でも公務の時間をもらうわけだし、頑張らなくちゃ。