第21章 『停滞』 4
しかし、ここでお目にかかれたのは奇跡だろう。
そしてなにより、『レイブン中将の部下』でしかない僕にここまでの視線を向けてくるのは、ただ、部下のくせにという訳でもないだろう。
そして、彼女らの後ろにある大きな穴。
その横には興奮した馬と血が滲み出ている包帯に巻かれたナニカ。
「それで、何があったのですか?」
「お前には関係のない話だ。」
あくまで下の者が関わる話ではない。という体を保つ少将。
この段階では僕が一方的に彼女の事を知っていることになるだろう。
ここで一つ、何か蜘蛛の糸のようなものでもいい、ロイやアームストロング少佐、エルリック兄弟やファルマン准尉との『つながり』を示して置きたい。
「あの、このような時に申し訳ないのですが。いつも貴女の弟君にはよくしていただいてありがとうございます。ファルマンもこちらに配属されたと聞きました。」
早口にそしてあまり声が大きくならないように気を付けそう伝え、一つゆっくりと敬礼をしてから、あたかもレイブン中将を探しています。という風にこの異様な雰囲気の場所を後にした。
「あの、レイブン中将を見かけませんでしたか?」
何となく口の軽そうな兵士をとっつかまえては、不快極まりないが女性のふりをして(胸に簡単な詰め物をして)猫なで声でたずねた。
あの後、道を急ぐ兵を捕まえて、中将はどこか?と尋ねると、ことごとく無視されたのだ。
そして、この作戦を思いついたのはここを歩きまわっていて一つ気がついたから。
『女の人がいない。』中央にはそれなりに女性の軍人さんもいた。
そのような僕の努力のおかげで、中将が牢屋に向かったと聞きだした。
情報さえ得られればもうこんな恰好する必要も無し!
そーっと牢の方へ向かえば、やはり止められた。