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七色の雫 ~生きる道の再構築~

第21章 『停滞』   4




「はっはっは!」

まぁなんとお楽しそうで。
さすがに列車の中なので立ったまま護衛をしている訳ではないので大変楽だった。
他に護衛もいたし大した事件も起こりそうになかった。

「まったく。」

少しばかり楽しそうにそう呟いて向かったのは、北のブリッグズ。
そして最初に向かったのは予想に反して病院だった。

「ここで待っていたまえ。」

レイブン中将と怪しい医者だけが病室への廊下を歩いて行った。
しばらくすると白いスーツに白いハットの人物を伴って戻ってくる。
イシュヴァールで活躍し今は服役しているはずじゃ?
どうしてここにいる。
ゾルフ・J・キンブリー。

「さぁ。行こう。」

なぜ、どうして。と、いつかのエドワードのように疑問がふつふつと湧きあがるが、質問する事は許されない。
そしてまた、沈黙した車内に戻る。
ガタゴトと懐かしいような薄暗い雪景色の中を物々しく走っていく。
ブリッグズは噂に聞きし鉄壁の砦だった。
無骨で堅そうで、何より敵から見れば陥落なんて程遠い物に見えた。
ブリッグズの兵士たちに案内され、少々待たされると、兵の上官だろう人物が迎えに来た。

「これはこれはレイブン中将。お待たせして申し訳ありません。」

浅黒い肌に色眼鏡。
何となく肌の色から一人の人物を想像させられた。

「今日はどのようなご用で?」
「なに、たいした用ではない。こちら方面に来る用事があったので、ついでに挨拶でもと思ってな。堅苦しい訪問ではない。」

ふむ、見かけに寄らずタヌキのようだ。
キンブリーを除き、僕を含む部下はそれなりに彼らから離れて待たされた。
挨拶がすまされたあとは内密な話でもあるのか少々声がちいさくなった。
何かと機械音のするこの軍部では声が聞き取りにくい。

「お前たちは下がっていなさい。」

下がってろって……。
この不慣れで広くて確実に迷子になりそうなブリッグズで?
そう思っているところに、気の効くブリッグズの兵士が休息所のような所に案内してくれた。
まぁ、呑気に暖かいのみものをすすっている訳だが、やはり落ち着かない。
ガタイのいい男が二人。
一人は医者が中央に帰る時に一緒に付いて行った。

「手持無沙汰だな。」
「まぁ、暇でいい。」

……呑気。


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