第5章 優しさにも色々な種類がある
副長室にて土方さんに指示を受けている
「いいか結衣、婦女に紛れて中の状況を俺達に伝えてくれ。お前が合図を出したら俺達もすぐ中に入る」
『はいッ!』
「人質の救助は俺達に任せてお前はすぐにそこから離れろ」
『え、犯人たちは捕まえないんですか?』
「それは他の一番隊の隊士たちに任せてある」
『でも奴等に一番近くまで接近出来るのは私です!私がやらないと…』
「危険だ。総悟にまかせろ」
副長の言葉に目を見開いた
しばらくの沈黙の後、部屋を出ようとする彼に言った
『…私、にやらせて下さい』
「…駄目だ」
『どうしてですかッ!私はあの日から変わりました!もうちゃんと戦えます!!』
「…」
『刀だってちゃんと握れます…人だって…斬れます!』
俯いて手を握り締めた
私はもう見てるだけは嫌なんだ…。
「結衣、お前は自分でもまだ気づいちゃいねェ…テメェ自身に迷いがあることに」
『!』
迷い…?
「戦では一時の迷いが命取りだ…それはいくら人を斬ろうが関係ねェ。自分では出来るつもりでもそう簡単にはいかねェ時もある」
『でもッ』
「結衣、お前はまだ弱い…」
『!!』
土方さんの言葉が頭の中に響いた
私が…弱い
- 行ってくるなっ!結衣 -
そう言って去って行く彼の背中を見つめていただけのあの日から
私は何も変われていなかったのだろうか。
副長室から出て縁側で一人団子を食べながら空を眺めていると突然後頭部に激痛が走った
「あ、悪い。あまりに寸胴体型だったもんでゴミ箱と間違えちまったぜィ」
『沖田隊長…』
どうやら私の頭に当たったのはパトカーの鍵みたいだ
ていうか鍵捨てるってわざとだなこれ…。
「なんでェ反応薄…何か悪いモンでも食ったかィ?」
そう言って不思議そうな顔をして私の隣に座る
『違いますよ。着崩れするかもしれないから大人しくするようにってさっき山崎さんに言われたんです』
「へェー…」
沖田隊長はニヤニヤと笑いながら私を見つめる