第22章 立場が変わって初めてわかることもある【真選組女中編①】
『ッッ!美味しすぎる!!』
串の止まらない私の様子を近藤さんは柔らかい表情で見つめた
「…でも少し安心したよ」
『えっ?』
「いや…ココ最近ずっと元気なかっただろう?まぁ…無理もないが」
『…』
近藤さん…もしかして私のこと心配してくれてたのかな。
「いくらトシの決めた事でも…納得出来んと思うだろう。俺も、お前の気持ちは痛いほどよくわかってたはずなのに…この状況に何もしてやることが出来なかった」
『…そんなっ局長は何も悪くないですよ。人を護るなんて人一倍大口叩いてたくせに…結局何も出来なかった私が悪いんですから…』
「結衣ちゃん…」
『それに副長の判断は正しいです…。今の私では…戦場に立つことは出来ません』
沖田隊長の言う通りだ。
私は"人を護る"なんて言葉を口にすることで自らを侍であると言い聞かせてきた。
大切な人を失うのが辛くて、必要とされなくなるのが嫌で
置いていかれるのが…怖かった。
もう人殺しと呼ばれてもいい、女として生きれなくてもいい、
もうこれ以上…目の前で誰か大切な人が傷つくところを見たくない。…ただそれだけだった。
『でも最近ふと思うんです。…剣も握れない私がここにいる意味はあるのかって…』
「…。」
『局長…財閥の娘でも真選組隊士でもなくなった私は…ただの大石結衣は…これからどうなるんですか?』
また1人、真っ暗な道を歩いて
- 結衣! -
その手を差し伸べてくれる人が現れるのを待つことしか出来ないのだろうか。
歪む視界と流れる涙は瞬く間に俯く私の袴を濡らす
近藤さんはそっと私の頭に手を乗せ、静かに言った
「結衣…知ってるか?
お前が抜けた1番隊の枠…まだ代わりに誰も入ってねーんだ」
『えっ…』
驚いて顔を上げる私を見つめ近藤さんは微笑んだ
「それが何故だかはわかるだろう?」
『…』
「今の1番隊にお前以外の誰かを持ってくるなんざ考えられねェからさ」
『っ…』
「確かに実力で言えばお前に勝る者は多いかもしれん。けど、俺達が求める真の強さってのはそれだけじゃねェ。仲間同士の信頼や絆、これが欠けても真の侍とは言えねぇんだよ」
『仲間同士の…絆』