第20章 甘い物の食べ過ぎには気をつけろ
『隊長、あの…この格好どうですか?』
「あーどうしたんでィ、七五三か?」
『違います』
あれ、私の気のせいだった?
『そ、そうじゃなくて今日銀さんと着物屋に行って買ったんですよ!』
「へェ~」
『へェ~って…それだけですか?』
「他に何か言わねェと駄目かィ?」
さっきとは打って変わってしれっとしたその態度に少しムカッと来た私は頬を膨らませ、そのままそっぽを向いて歩いた
『もういいです!どうせ何着たって可愛くないですよ私は!雌ブタですよ、雌ゴリラですよ、雌ガエルですよ!』
「いや俺ァそこまで言ってねェよ」
軽く四股を踏みながら前を歩く私に沖田隊長は溜息をついた
「…別に可愛くねェとは言ってねーだろィ」
『え…?』
沖田隊長の言葉に驚いて振り向くと、彼は私を見つめ微笑んだ
「少なくともその格好の時は雌ブタ扱いは出来ねェな」
え…うそ。…あの沖田隊長の口からそんな言葉が出てくるなんて。
何より、最後の言葉が嬉しかった私は沖田隊長の横を歩き彼の顔を覗き込んだ
『沖田隊長、今私の格好…可愛いって言いました?』
「言ってねェ、幻聴でィ」
『またまた〜もっと褒めてくれても良いんですよ!』
「言っとくが俺は着物が良いつったんであってオメーが可愛いとは一言も言ってねェから」
『雌豚扱い出来ないって言ったじゃないですか』
「言ったら着物が可哀想じゃねーか。…あ、でもお前に着られてる時点でもう既に可哀想か」
『…なんか普通に雌豚扱いされてる時よりも貶されてる気がするんですけど』
兎にも角にも沖田隊長が結婚せずに済んだことは本当に良かったけど…。
『まぁ、でもどうしても観たいって言うなら、たまにならまた着てあげてもいいですよ』
「いやいらねェし、目が腐らァ」
『え、目の保養?もう隊長ったらッ!』
勢い良く沖田隊長の肩を叩く
「前言撤回、やっぱオメーはただの雌ブタでィ」
私が雌ブタ扱いから解放される日は、まだまだ先になりそうだ。