第20章 甘い物の食べ過ぎには気をつけろ
「おかえり」
店の外に出るとこちらに手を振る銀さんの姿があって、私は慌てて彼の元に駆け寄った
『ごめんなさい銀さん、また待たせる形になっちゃって…』
「気にすんな。それよりどうだった、沖田くんの見合い。上手く破談に出来たか?」
銀さんの言葉に私は目を丸くして彼を見つめた
『え、破談って…。もしかして沖田隊長が私を連れて店に入ったのって…見合いを破談にする為!?』
「…そうじゃねェの?」
待てよ、じゃあひょっとして
あれも
"俺にはもう、ここに一生護るって心に決めた女がいるんでィ"
これも
"俺はこいつ以上にそいつと傍にいてェとは思えねーんでさァ"
みんなその為の嘘だったってことおおお!?
私は傍にあった電柱に勢い良く頭を打ち付けた
あ、危なぁああ!
もう少しで勘違いするとこだったあああ!!
どうりで迫真の演技だと思ったんだよ、涼しい顔して傍にいたいとか言うもんだから何かあるとは思ってたけど…あー危ない危ない!
もう少しで
"は?勘違いしてんじゃねーよメス豚、自惚れんな"
とか言われるところだった!
安堵の溜息をついて私はそのまま壁にもたれかかった
「大石、」
『あっ…沖田隊長…』
少しして店から出てきた沖田隊長は私と銀さんを見てまた少し表情を曇らせる
『あの…お見合い相手の人はどうしたんですか?』
「迎えの車が来てさっき帰った…」
『そ、そうですか…』
あの女の人はお父上には上手く話すって言ってたけど…真選組の方は大丈夫なのかな…。
「デート」
『え?』
「邪魔して悪かったな」
そう言って私から目を逸らす沖田隊長にまた胸がズキッと痛んだ
「旦那も…勝手にこいつ借りちまってすまねェ」
「…まぁ丁度帰るところだったしな、それより沖田くんこそ今から屯所に帰んだったら結衣も一緒に連れて帰ってくんねーか?」
『銀さん…?』
「丁度良かったじゃねーか。万事屋は屯所とは方向違ェし、それに2人してその格好でいる方が攘夷浪士共にも気づかれにくいだろ」
そう言って銀さんは私の頭にそっと手を乗せる
「今日はあんがとよ。また近いうちに餡蜜でも食いに行こうや」
『うん、…約束ね』
笑顔で頷く私に銀さんはそっと微笑むと、背中を向け歩いて行った