第13章 嫌な予感ほどよくあたる
もうあんなこと繰り返すのは二度と御免だ
そう思って、再び刀を握る決心をしたのに
どうして…私は
また大切な人を傷つけてしまうのだろう…。
「少し長居し過ぎたな…今日のところは私たちは帰るとしよう」
父上は言いながらゆっくりと腰を上げ私に背中を向けた
「結衣、お前にもし家族を想う気持ちがあるのなら帰って来い。但し警告はした。母上のことも真選組のことも…決めるのはお前次第だ」
『…』
すっかり日の落ちた頃
近藤さんと土方さんとで父上を見送った後、私は全身からドッと力が抜け落ち、その場に崩れた
「結衣ちゃん!」
「結衣!」
もう私は何が本当に正しいのかわからなくなった
平河隊長との約束を守りたい。
真選組を護りたい。
だけど…私のせいでみんなが傷つくのなら
私はここにいるべきじゃないのかもしれない。
本当に大切だと思うなら…。
襖を叩く音がして目を開けるとそこには土方さんの姿があって私は布団に横になっていた
『あれ…ここは?』
「お前の部屋だ…」
身体を起こし、土方さんを見つめる
『…私、気絶してたんですか?』
「…2時間くれェってとこだ…まァあの状況だ、無理もねェだろ」
言いながら煙草に火をつける彼をぼーっと見つめる
一瞬でも…さっきまでのが全て夢であって欲しかったと思う自分がいた
だけど、懐にある封筒が嫌でも現実だということを突き付けてくる
「…総悟が目覚めた」
『えっ…本当ですか?…良かった』
安堵の溜息をつくと土方さんが言った
「一応お前の親父が帰ったことは話した…だがこの先お前がどうするかは自分の口から伝えろ」
『……はい』
私は…もう自分の中で答えは出ていた
「もう…変わらねェのか?」
『はい…副長、私…やっぱり帰ろうと思います』
目を見開く彼の前に刀を置き、そっと微笑んだ
『大丈夫、もう決めたんです…』
結局私は…今も昔も何も護ることが出来ない臆病者だ。