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短編集…あんさんぶるスターズ!【あんスタ】

第63章 死なばもろとも 佐賀美陣


私はあのページにアクセスした。


『はいはい、何の用?』


最近発表されたSNSの一つで、自分の口調や姿、声を真似したアバターが画面に表示されるものだ。

アバターを交換することもでき、誰とでもアバターを通じて交流できる。


私は陣くんとアバターを交換して、二人でしか繋がらないようにした。

あらかじめ自分のアカウントに言葉をいくつか打ち込んでおくと、それを勝手にアバターが話し始めるのだ。


『ねぇあんずちゃん、今日もあきやんがうるさいんだ。何とかしてよ。』

「あきやんって誰って、前から聞いてるでしょ。」

『あきやんとは、俺の超絶可愛い後輩である』


質問をすれば、単語を広いとってアカウント主のプロフィールからその部分を拾いとってくる優れもの。


「どっかご飯行こうか。」

『いいよ、フレンチ?』

「えぇー、また?」


今つけているテレビの生放送では陣くんがにこにこ笑顔で踊っていた。


『じゃあ、楽屋のお弁当』


アバターが棒読みで会話を繰り広げるなか、彼のパフォーマンスはフィナーレをむかえていた。


『ねぇあんずちゃん、浮気しちゃ怒るから』

「いつからそんな嫉妬深くなったの?」

『先月の、秋』


私は吹き出した。陣くんったらやたらと詳しくプロフィール打ち込んだんだな。


「浮気しないよ。今のところ、君が一番かな。」

『俺も』


この返事は、特定の言葉に反応してアバターがしゃべるようになっている。さては事前に設定してたな?


「ねぇ陣くん、今でも私を記憶に置いて後悔してない?」

『しないよ、永遠にね』


アバターは彼の言葉を代弁していた。


「SNSも良いもんでしょ」

『ううん、一番はあんずちゃん』


彼はそこばかりは譲れないと設定に真っ先に打ち込んでいた。

私はクスクス笑った。



次会うとき、『アバターばっか見ないでくれる』って怒られそうだ。


でも陣くんは忙しいから、しばらくお世話になりそうだ。


アバターくん、末長くよろしくね。



「もちろん、君もね」



テレビに写る陣くんは、客席に向かって手を振っていた。


当然、私の声は届かなかった。
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