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短編集…あんさんぶるスターズ!【あんスタ】

第56章 それはそれは 七種茨


『人間だから堕ちるのであり、生きているから堕ちるだけだ。』

しかし、人間は堕ちぬくには弱すぎるらしい。だが、人間が救われたいならばただ堕ちるしかない。それでもすんなりと堕ちぬくことはできない。


へぇ、と納得して私はパラパラと本のページを遡って、ある部分を凝視した。この動作も何回目だろうか。



『単に人生を描くなら地球に表紙をかけるのが一番正しい』


この一文は訳がわからない。他は理解できるが、ここだけは難しい。どんな辞書にものってない、この本を書いた者のみぞしる言葉の意味。


私はずっとそれが知りたかった。



思えば、それを理解するために生きているのかもしれない。



(……………って大袈裟か。)




私は栞をはさみ、本を閉じた。

待ち合わせしていた彼が来たからだ。


「こんにちは!待たせてしまいましたか?」

「私がはやかっただけだよ、茨くん。」


肩で息をする彼を落ち着かせるために私はやんわりと微笑んだ。彼はそれにニッコリと笑い返した。


さて、わざわざ休日に駅前で約束していてなんだが私と茨くんはそういう関係ではない。

彼がこの前、テレビの企画でクイズ大会に出た時に見事優勝したらしい。(テレビは見ないのでよくわからない)その景品がなぜか男女カップルでのスイーツバイキングの無料券だったというので、手っ取り早く私が誘われた。

仕事に関する情報を抜かれそうで怖かったのだが……プライベートと仕事はちゃんと分ける、何でそんなに信じてくれないのか、自分はたいそう失望した……などと言われては行かないわけにはいかなかった。


つまり欲しくもない無料券もらったけど使わないのももったいないから側にいた私を誘っただけである。


(そう、これはある意味仕事……その延長戦。心身を強く持ちただケーキを食べたらそれで良し。)


男の子と二人になることなんてなかった。学院はいつも賑やかで、皆がいるから。

正直緊張している。今来ている服はおかしくないか、緊張が顔に出ていないか、本当にケーキバイキングに行かねばならないのか、慣れない化粧が決まっているか、本当にケーキバイキングに行かねばならないのか…………

しかしそんなことを悩んでいる間に彼はさっさと先に行く。どうやら私に歩調を合わせる気はないらしい。

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